第5話 ケチな女神

 無事に戦闘のチュートリアルを終え、私は助手の指示のもとに宿へ向かうことになった。女神から銀貨を5枚もらっていたが、これはどれくらいの価値なのだろうか?


《この世界の人間の通貨は金貨、銀貨、銅貨の三種類があり、1金貨は100銀貨と、1銀貨は100銅貨と交換可能です》


 1銅貨は日本円でどれくらいだ?


《この世界とマスターの元居た世界とでは価値観が大きく異なるので、一般に比較することはできません》


 そうか。確かにここは現代とは遠くかけ離れた中世ヨーロッパっぽい雰囲気のある世界だし、なにより魔物だのスキルだのがある世界だ。私の持っている物差しではこの世界の感覚を測り切れない。一刻も早くこの世界の価値観に慣れなくては。


《着きました。ここがマスターにお勧めする、この周辺ではの宿屋です》


宿屋に入ると、すぐ目の前にカウンターがあり、そこにいる男の人がこちらを見るなり、大きな声で話しかける、


「おっ、あんちゃん見ない顔だね。冒険者かい?」

「はい。最近この町に来たものでして。部屋は空いてますか?」

「あぁ、二部屋ほど。ここはどの部屋も一泊銀貨2枚、三食付きで銀貨3枚だ」

「銀貨3枚だと......」


 これでは一日しか泊まれないではないか。二日目も泊まるにしても、その日は食事抜き。一日でお金を稼ぐ手段を見つけなくては。女神のやつ、ケチにもほどがあるだろ。


 ところが、案内された部屋を見てみると最安にしては悪くない部屋だった。少なくとも、散らかっている私の部屋よりは疲れがとれそうな部屋だ。固そうだが一応ベットもついている。私はベットを見るなりすぐさま飛びつき、今日のことを振り返り始めた。


 眠っている間に気づいたら異世界転移......。現実世界はどうなっているのだろうか。生徒は、親は、いったい。結局彼女との約束も果たせないまま......。


 そう考えているうちにどんどん眠気が増してくる。あれこれしているうちにもう日は落ちた。まだこの時間帯ではいつもなら全く眠くならないが、研究のことが頭にないと自分の体が正常に機能していることが分かる。不安はいくつもあるが、私は研究に関すること以外興味がないからか、そいつらが私の睡眠の妨げになることはなかった。




 ◇◇





「う~ん。かなりよく寝れたな」


 窓の外を見るとちょうど日の出であった。眠気も全くない快調な目覚め。なんと健康的な生活なのだろう。


「......さて、今日中にお金を稼がないと」


 そう思い立った私は、すぐさまベットから降り思案する。


「しかしどうすれば。何も成果がなければ明日は食事抜きか野宿になるし」


《ギルドで冒険者登録をし、依頼を達成した報酬で稼ぐことを推奨します》


 冒険者か。たしか、宿の受付のおっさんも私のことを冒険者と呼んでいたな。


《少し離れた場所にギルドがあります。この町は田舎ではあるものの、ギルドがあるので他の町からも冒険者が集まってきます》


 なるほど。それで見ない顔の私を、宿屋のおっさんは冒険者だと推測したのか。この町の宿は多くの冒険者が利用しているのだろう。ここの宿代が最安なのもギルドから遠いためか。


「よし、ならさっそくギルドへ向かうとするか」



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