第11話 一線を超えた裏切り

「さて。実はこれ、31日の間に発生していた出来事である」

「はぁ!?」

「この31日の間に幼馴染はNTRされる事になる」


無常にも水樹がそう語りだした。え、フレーバーじゃなく、マジでそういう事の為に31日過ぎてるって事か?30日目のピロートークも、裏で奪われてるのを示唆する為に?


「てことで地味に長いから飛ばそうか」

「そんな長いのか?」

「5回目で諦めるからな幼馴染が」

「思ったより堪えてた……」


次回で諦めてNTRと思ったら、4回もそういう事に及ばないのか。それだけ思っていたって事だろうか?そう思いながらも水樹が無常にNTRシーンを流した。

タイトルは一線を超える裏切り。

もう嫌な予感しかしない。


―もう、限界だ。あの人の心に、私はもういない。

『……』

『やあ、今日も来たのかい?』

『……』

『大丈夫?』

『マルクさん、お願いがあります』

『僕に出来る事なら、可能な範囲で』

『私を抱いてください』

『……君は何を言ってるのか、理解してるのかい?』

侮蔑の表情でマルクさんは私の事を見ている。それはそうだろう。

会って間もない人に抱いて等を言う女、警戒して当然だ。彼が裏切られてるから余計に。でも、もう私はこれ以上我慢できない。我慢できない出来事が、今日起きてしまったから。

『……』

『……本当に何があったんだい?』

『今日、今日、また営みが繰り広げられて、それで……』

聞いた。聞いてしまった。私の思い人が、勇者が、愛を囁く言葉を私にではなく、パーティメンバーに囁いてるのを、聞いてしまった。

まさかと思いながら、お酒を入れてないのを確認した。毎日毎日確認した。だけどお酒が入ってないのは確認済みだ。という事は、素面で愛を囁いてるという事だ。

今まで大丈夫と思っていた支柱が、崩れ去るのを感じ取ってしまった。

それをマルクさんに伝えた。

『それは……無責任に大丈夫と言った僕が悪いね。ごめん』

『いえ、良いです。結局、私の思いは彼には届かなかったというのが分かってしまったので』

『ならなんでまた?』

『同じ裏切られた者同士、傷の舐めあいと行きませんか?っていう、最低な誘いですよ』

『……僕は、構わないよ?でも、君はそれで良いのかい?』

『彼以外に知ってる男性、貴方しかいませんから』

『……そう』

それを最後に彼は何も言わず、私の手を取って家まで案内してくれた。質素だが、綺麗に片づけられた部屋。そこで彼のベッドで横になる。

それに続いて彼が覆いかぶさるように乗っかってきた。

『最終警告といきたいんだけど、後悔しないんだね?』

『これ以上する後悔なんてありませんよ』

そう告げ、私の思い人に捧げたかったファーストキスを、処女を、会って間もないマルクさんに捧げた。―


「止めてくれ……止めてくれ……俺そんなつもりで別ルート行ったつもりじゃなかったんだよ」


幼馴染が主人公の勇者以外の男と交わるエロシーンが流されているのを直視できなかった。個別ルートの裏でこんな事が起きてるだなんて。


「俺此処でNTRに嵌ったんだよなー」

「先に脳破壊したのどっちだよコレ……主人公の方だろ」


俺は強いからーって獣人ルートを通った裏で幼馴染を滅茶苦茶傷つけてた事を知って頭を抱えている。

そりゃ、長年一緒にいた女の子を裏切れば他のパーティメンバーも冷たい視線に変わると思うわこれ。


「あ、ちなみに個別ルートに入った30日目で他のヒロインも元カレとやり直してて非処女だったりするぜ」

「え、なんでまた?」

「長年連れ添った女の子を捨てた勇者を信用できなくなったヒロイン達が元カレと連絡を取って、怒りを覚えた元カレが奪われるくらいならと彼女達が抱えた悩みを解決させてよりを戻すってなってる」

「……」

「製作者曰く、誰かと純愛するなら、誰かを敵に回すのを理解しろって事だとよ」


製作者、どういう発想でこのゲームの開発に至ったんだよ。

あ、これ俺が獣人ルートを通ったからこうなってるけど、幼馴染ルートだとどうなるんだ?


「これ幼馴染ルートだとどうなるんだ?」

「その場合でも元カレとよりを戻すぜ。ただ理由が忘れようとした恋人を思い出してしまったからになる」


あー、それで笑顔の立ち絵を維持してるのか幼馴染ルートだと。別に使命があっても恋人はいても良いと、他でもない勇者に恋人がパーティメンバーにいるからと判断して。

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