第12話 真エンド
「さて真エンドのラスボス倒すか」
「俺今そんな気分じゃねぇ……」
裏であんなに傷つけてた事を知ってショックを受ける中、水樹はラスボスに向けてレベル上げをしていた。個別ルートのラスボスはあっさりだったが、真エンドのラスボスは強いのか?
「そんなに準備いるのかよ」
「個別ルートと違って真エンドのラスボスは本気だからな」
「具体的には?」
「個別ラスボスの推奨レベルが50なら、真エンドのラスボスの推奨レベルは80だ」
「たっか!?」
このゲームはレベルが上げやすいとはいえ、それでもその推奨レベルの差には驚きを隠せない。設定で考えたら、復活を完全に阻止できる存在が来てしまったからか?
「救済措置としてここの雑魚敵が触れるだけで倒せて経験値も多いから、ここでレベル上げだ」
「なるほど、じゃあそのレベル上げの間にサキュバスの立場を知りたいんだけど」
「サキュバスか?」
一人だけNTRシーンを用意されてないし、この作品においての唯一の非処女スタートだ。道具屋の子なのは分かるが、それ以外が分かってない。
「サキュバスはな、没設定から引っ張り出してきたから道具屋のサキュバスでしか無いんだと」
「え?没なのか?」
「没設定に王様の近衛で勇者の行動の監視してたってあったけど、ヒロインがやる事じゃないって没にしたとか」
「で、結果の道具屋なのか」
それはヒロインのする事じゃねえわなー。なんて思っていたら準備が整ったのか、操作を俺に渡されたのでラスボスに挑みに行った。
しかし個別ルートと違ってかなり強いらしいがどう違うのやら。
「これ個別と真エンドでどう違うんだ?」
「まあやれば分かる」
水樹がそういうので初手で物理反射の見切りと魔法反射のリフレクションを使用。
『次元斬!ビッグバン!マリオネット!』
冗談抜きで3ターンで敗北した。え、RPGでも見ないくらいにはマジで強くねこのラスボス。
「反射使ったのに反射しないしダウンした味方が攻撃してきて負けたんだけど」
「次元斬は反射破壊の物理とビッグバンは反射破壊の魔法、マリオネットは戦闘不能を操って行動回数を増やしてくるぞ」
「このラスボス、なんでエロゲにいるんだよ」
ラスボスの本気を伺えたのは分かった。ペナルティ攻撃ってそういう事か。
というかそれだと余計に幼馴染の撃たれ弱さを気にしないといけないのか。推奨レベルが高いのも、安定してカバーするのに必要って事になるな。
ただ種が分かれば気を付ければどうにでもなるな。かなり強かったけど倒せたわ。
『なぜだ!?なぜ交わっておらぬ!!あり得ん!!がぁあぁぁっぁぁぁぁ!!』
おー不穏な発言を残して消えた個別ルートと違って、完全に断末魔に変わってる。
面白いから良いけど、なんでこれエロゲでやってんだ?
「そういや真エンドの内容ってどうなるんだ?ハーレム?」
「それは製作者から否定されてるから違う」
「あ、マジで?」
こう、世界の敵を完全消滅させた勇者なんだから、ご褒美として今いるメンバーを侍らせるのも悪くは無いと思うんだけどな。
「忘れてるようだが、個別ルートに入らないとヒロイン達の心を掴む展開が起きないから使命で来てるだけになるんだよ真エンドって」
「えー……」
言われてみれば個別ルートに入って初めて獣人の子が獣化の悩みを教えてくれたし、解決後は獣化するようになった。ルートに入った時点で強制的に性行為に及んでる。
け個別ルートに入りつつ真エンドはラスボスの設定で不可能にされてるから、嫌でも幼馴染を切り捨てて完全消滅を狙えない道を歩まざるを得ないのか。
でも真エンドだとヒロイン達の悩みを解決しないまま世界の敵の完全消滅が行えたって感じだし、現を抜かすか、使命を取るかって迫られてるのか。
「そういえばユニコンだけ悩みが無いよな」
「ユニコンは信仰が強すぎて元カレの事を忘れるのが出来てない状態らしい」
「あーそれでルートに入ると勇者に振り切ると?」
「そんな感じ」
悪く言えば元カレをキープ状態にしてたって事か。しかし真エンドで何もないのは虚しさがあるなぁ。
「この後どうなるんだ?」
「NTRシーンに元カレの元に帰ってその後が描かれてる」
「真エンドでもNTR追加されるんかよ……」
初めて聞いたわ真エンドでNTRシーン追加って。絶対ハーレムにしないっていう製作者のアンチハーレムっぷりを垣間見たわ。
「見方の違いと言えば良いか?プレイヤーからすれば元カレの元に行かれたって感じ」
「ああ、ヒロインからしたら使命を終えて待ち人の元に戻ったって感じか」
ヒロイン達、誰も残らないのな。サキュバスは青年からアプローチかけられて満更でもない表情を見せてるし。というか唯一サキュバスがNTRに参加してくるのここかよ。真エンドのシーンに混ざってるからNTRシーンにいないのか。
「これ勇者が孤独で終わるんかよ」
「いや一人いるじゃん。幼馴染」
「あ」
そういえば最初から一緒にいたのって幼馴染だったな。弱くても健気についてきた子。あーそれで真エンドでもNTRされないのか。裏切っても無いけど、使命の為に現を抜かす寄り道もしなかったけども。
現に勇者と幼馴染が健全なラブコメのような良い展開になってる。
「魅力的なヒロインもいるけど、ずっと一緒にいた子を忘れるなって事か」
「そういう事だ」
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