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 その本に書名は記されておらず、内容はすべて行草体で綴られていた。解読に手間がかかるため三代前から概要を口授していたようだが、従伯父はわたしに内容を伝えることなく急逝してしまった。

 おそらくは初めからわたしに教えるつもりなどなかったのだろう。彼にとってわたしは後継者ではなく、憐れな生贄にすぎないのだから。

 要点をまとめたメモでも挟まっていないかと期待していたが、それらしきものは見当たらなかった。

 わたしは仕事の隙間を縫って図書館に通いつめ、長い時間をかけて慎重に書物の内容を読み解いていった。

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