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 その本は段ボール箱の底に無造作にしまいこまれていた。非常に古く珍重な書物だが、丁寧に扱う必要はない。従伯父いわく、忌々しい力が作用しているため損傷の心配は一切ないということだった。その言葉を裏付けるように、紙の質や製本の仕方にこそ古さは感じられるものの、先ほど書きあげられたばかりであるかのような真新しさを纏っている。

 わたしは試しに本の端をガスコンロの火で炙ってみた。事実なら彼の話も少なからず信憑性を帯びるだろう。

 従伯父の言葉は本当だった。炎にちろちろと下端を舐められているにもかかわらず、その本は燃えあがる様子どころか焦げる気配すらない。

 わたしはガスを止め、意を決して本を開いた。

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