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 わたしは事実をありのままに答えた。

「死んだ伯父さんに教わったんだよ」

「伯父さんって?」

「去年に亡くなった、母さんのお兄さんだよ。父さんも会ったことくらいあるだろ?」

「よく聞け。母さんはひとりっ子だから兄弟なんていないぞ」

「いや、そんなはず——」

 言いかけて、伯父と母が会話する姿を見たことがないのに気づいた。それどころか、伯父は決まって母の不在時にのみ我が家を訪れてきたため、ふたりが顔を合わせた場面すら見た記憶がない。

 言葉も出せず固まっているわたしに、父が二の矢を継いだ。

「そいつはおれよりも少し年上の、面長で彫りの深い、どちらかというと日本人離れした顔つきじゃなかったか?」

 記憶をたぐる。父の言うとおりだった。わたしは頷いた。

「そいつはおれの従兄だ。あいつ、やっぱり諦めていなかったんだな」

 わたしは混乱のあまり、まだ口を利けずにいた。

「あいつにもあいつの兄弟にも男の子が産まれなかったから、それでおまえを標的にしたんだろうな。今からでも遅くはない。彼女のことは忘れて、仕事も辞めろ。二度とあそこに近づくな」

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