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 山の所有者の紹介でわたしは父との対面を果たしたが、嬉しさは少しも感じられなかった。物心がつく頃には両親が既に離婚していたため、父に関する記憶も思い出もなにひとつ持ち合わせていない。

 喜んでいないのは父も同じようだった。父はほとんど口を開くこともなく、冷めたコーヒーをじっと睨みつけている。

 わたしはいちばん知りたかったことを尋ねた。

「母さんはどうして、あなた——父さんが行方不明だなんて言ったんだと思う?」

 わたしの予想に反して、父は間を置かずに力強い調子ではっきりと答えた。

「そう信じさせるように、おれがおまえの母親に頼んだからだ」

「なんの意味があってそんな嘘を?」

「おれの代で終わらせるつもりだったんだよ。今となってはそれも難しいかもしれないけどな」

「終わらせるって、なにを?」

「もういい。今度はこっちが質問をする番だ。おまえ、どうやってあいつの存在を知った?」

「あいつ?」

「彼女だよ。そのためにあそこで働いているんだろう」

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