1-15.
今頃、ミシェルもジュノもアイリーンも定例パーティーで遊んでいる頃だろう。
常々、特に何もしないのになんで2日間も集まる必要があるのかと思う。 ミシェルもジュノもアイリーンも単独として優秀なのにアホと混ざると悪い刺激を受けるらしい。
まあ、どうでもいいが。
若手の育成、新しい魔法や技術の開発。
ジョヴァンニにとってそれらの事柄は所詮は暇潰し。 眠らないジョヴァンニにとって時間は腐るほどあった。
テロ解決も大して時間がいらない。
執務室で手紙を書くのは無駄に時間がかかる。
「最近はよく手紙を書くな……」
今、アイリーンの異動を皇帝に打診する手紙をしたためている。 どうせ通る。
皇帝もジョヴァンニがアイリーンを育ててくれるならさぞかし喜んでくれるだろう。
ペンを置くと飼っていた子狼がペット用開口部からノックもなく入ってくる。 真藍がしつこくドッグフードをあげるので嫌気が差して数日前に家出したワンコだ。
家出した時より太ったような。
「お前、肥えたね。 それに首輪……」
子狼の首輪が変わっていた。
文書を収納するカプセルがついている。
カプセル中には千切れた小さな紙片が3つ。
ジョヴァンニが治癒魔法で紙片を修復すると紙片は元の文書の形に正されていく。
1枚はジョヴァンニへの手紙。
『了解、カンパネラはまだか?』
そうとだけ書いて末尾にアネモネの花印が押されていた。 いや早えよ。 まだ手紙出してねえよ。
それにまたカンパネラか。
ジョヴァンニは書きかけの手紙をぐしゃぐしゃと潰してゴミ箱に投げた。 ヤギを飼う方が経済的だろうか。
ウォーデンの小僧と若き狼にも指示書が届くことだろう。
残り2つの紙片は異動辞令。
お前から渡せということだろう。
だったら封筒と切手同封しろよ。
仕事を投げ出すとソファに座っていた中年医者の向かいに座る。 彼はオリオン・フロージ。
ジュノの父親で軍位医師でジョヴァンニの弟子でもある。
「現代っ子は跳ねっ返りが多いねえ、オリオン」
「エメ様。 先日、定例パーティーの招待状を送ったはずですが」
「ジェイが爪研ぎに使っちゃった」
「娘は貴方に気があるようですが」
オリオンはつまらないことを言う。
「相変わらずお前は医者として優秀なくせに、社会を見るのは下手くそだよね。 金と権力があるところに皆集まるもんだよ」
「違うと思いますが? 貴方は社会や集団として機能したことは一度もない。 貴方は魅力的なのに、どうして……個を極めた存在です」
「そうだ。 お前は個を極めてる。 だからさっさとパーティーに行ってこい」
もう一人の同席者、眼鏡を掛けた金髪の青年アイザックが煙草に火をつけた。
彼はシエスタ機関の副長官だ。
彼はどうもジョヴァンニに嫁を作りたがる。
「花飾りもアイザック様に作って頂きましたのに、如何しますか?」
机には白百合の花飾りが置かれていた。
「シュレッダーにでも掛けといてよ。 どうせ造花なんでしょ?」
「分かりました。 娘にあげます」
「ぶっ飛ばすぞ」
「いいぞ、やってやれオリオン」
オリオンも共犯となると面倒だ。
定例パーティーに参加できそうな服を探していると子狼が足元でジョヴァンニを見上げている。
郵便物を運んだからお駄賃の餌くれということだろう。 ジェイみたいなことを言うやつだ。
「そういえば狼って主食なんだっけ?」
「ドッグフードではないと思いますが……マウスとかですかね? メスは持ってきているのですがマウスはございますかね?」
オリオンの胸ポケットから抜かれたメスが鋭く眩しい。
「お前の家じゃねえんだよ、マウスはねえよ」
子狼の餌がマウスのどこになるかは見ものだ。
オリオンに餌やりを任せてジョヴァンニは華やかなドレスに身を包んだ。
「さ、行こうか」
「正気か、お前」
アイザックは開いた口が塞がらないらしい。
そういう顔は大好きだ。
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