第13話 若獅子、飛翔す


 慶長17年(1612年)7月7日。柳川の地に、一人の男児が産声を上げた。立花直次の四男として生まれたその子は、後の立花忠茂である。

 その日、立花宗茂は、静かにその子の顔を見つめていた。宗茂には、実子がいなかった。しかし、彼は決してそれを嘆くことなく、立花家の未来を案じていた。

「この子が、立花家の新たな希望となるのか…」

 宗茂は、静かに呟いた。その時、彼の脳裏には、亡き妻、誾千代の姿が浮かんだ。

(誾千代…お前が生きていれば…)

宗茂は、胸の奥に押し込めた悲しみを、再び噛み締めた。

その時、宗茂の耳に、赤子の泣き声が届いた。

「宗茂様、この子を…」

直次が、赤子を抱いて宗茂に近づいてきた。

「宗茂様には、跡継ぎが必要です。どうか、この子を養子に…」

直次の言葉に、宗茂は静かに首を横に振った。

「直次、気持ちは嬉しい。だが、それは…」

「宗茂様!」

直次は、声を荒げた。

「この子は、あなたの血を継ぐ子です。どうか、この子を立花家の後継者として…」

宗茂は、直次の必死な願いに、心を動かされた。

(誾千代…お前なら、どうするだろうか…)

宗茂は、天を仰ぎ、静かに目を閉じた。

「…わかった。この子を、わしの養子とする」

宗茂の言葉に、直次は安堵の表情を浮かべた。

「ありがとうございます、宗茂様!」

かくして、立花忠茂は、生まれたその日に、立花宗茂の養嗣子となった。

宗茂は、忠茂を抱き上げ、その小さな顔を見つめた。

「忠茂…お前は、立花家の希望だ。強く、そして優しく育ってほしい」

宗茂は、忠茂に静かに語りかけた。

(誾千代…この子が、立花家を継ぎ、新たな時代を築いてくれるだろうか…)

宗茂は、忠茂の未来に、希望を託した。

キャスト案

* 立花宗茂:綾野剛

* 立花直次:高橋一生

* 永雲院:浜辺美波

見どころ

* 立花忠茂の誕生:立花家の新たな後継者の誕生。

* 宗茂の決断:養子を迎える宗茂の葛藤と決意。

* 家族の絆:宗茂と直次、そして忠茂の絆。

* 人間ドラマ:立花家の未来を託された忠茂の成長。

追加情報

* この物語は、史実に基づきながらも、フィクションとして描かれています。

* 登場人物の心情や人間関係も丁寧に描かれます。

* 家族の絆、そして、新たな世代への希望が描かれます。

* 静かで感動的なシーンが盛り込まれる予定です。


 夜の帳が下り、静寂が訪れた立花家の居室。宗茂は、幼い忠茂を寝床に寝かしつけ、静かに語り始めた。

「忠茂、眠れないのか?」

忠茂は、大きな瞳を輝かせ、宗茂を見上げた。

「じい様、昔の話を聞かせてください!」

宗茂は、忠茂の無邪気な笑顔に、かつての自分を重ね合わせた。

「そうだな…では、わしがまだ若かった頃の話をしよう」

宗茂は、遠い昔を思い出すように、目を細めた。

「あれは、わしがまだ弥七郎と名乗っていた頃のことじゃった。秋月・原田・宗像の連合軍二千が、立花領に攻め込んできた。わしは、五百の兵を率いて、敵軍を迎え撃った」

忠茂は、目を丸くして宗茂の話に聞き入った。

「じい様、すごい!」

宗茂は、苦笑いを浮かべた。

「すごいのは、これからじゃ。敵軍は、わしらを包囲しようと、兵を差し向けてきた。だが、わしは、伏兵三百を率いて、敵軍の側面を突いた。鉄砲隊を率いてな」

「鉄砲隊!かっこいい!」

忠茂は、目を輝かせた。

「じゃろう?そして、残りの兵二百は、薦野増時という男に預け、偽の旗を立てさせ、大友家の援軍が来たように見せかけた。敵軍は、たちまち混乱し、包囲を解いて退却を始めた」

忠茂は、興奮したように身を乗り出した。

「それで、じい様はどうしたんですか?」

「わしは、薦野増時、由布惟信、小野鎮幸ら千騎を率いて追撃を開始した。敵軍は、岩門庄久辺野に砦を築き、立て籠もっていた原田氏の将、笠興長隊三百人を駆逐し、百五十人を討ち取った。さらに、西の早良郡まで追撃し、原田親秀の早良城を焼き落城させた」

忠茂は、目を丸くして宗茂を見つめた。

「じい様、本当にすごい!まるで、鬼みたいだ!」

宗茂は、忠茂の言葉に、静かに微笑んだ。

「鬼ではない。わしは、ただ、立花家を守りたかっただけじゃ。そして、お前のような、未来を担う子供たちを守りたかった」

宗茂は、忠茂の頭を優しく撫でた。

「忠茂、お前もいつか、立花家を背負って立つ男になる。その時、お前は、何を思う?」

忠茂は、少し考えてから、力強く答えた。

「僕は、じい様みたいに、強く、優しくなりたい!そして、みんなを守れる立派な武将になる!」

宗茂は、忠茂の言葉に、満足そうに頷いた。

「そうか。ならば、わしは安心じゃ。さあ、もう寝る時間だ。良い夢を見ろ」

宗茂は、忠茂の寝床に掛布団をかけ、部屋を後にした。

忠茂は、宗茂の武勇伝を胸に、静かに眠りについた。その小さな胸には、未来への希望が満ち溢れていた。

キャスト案

* 立花宗茂:綾野剛

* 立花忠茂(幼少期):鳥越壮真

見どころ

* 宗茂の武勇伝:若き日の宗茂の活躍が語られる。

* 祖父と孫の絆:宗茂と忠茂の、温かい交流。

* 未来への希望:忠茂の成長と、立花家の未来。

* 戦国時代の戦:臨場感あふれる合戦シーンの描写。


 昔話の詳しい内容

 天正10年(1582年)4月、筑前の地は再び戦火に包まれた。秋月・原田・宗像の連合軍2,000が、立花領へと侵攻してきたのだ。立花道雪は、1,000の兵を率いて迎え撃つが、敵軍に包囲されてしまう。

「宗茂、伏兵500を率いて側面から奇襲をかけよ!」

 道雪の命を受け、宗茂は300の兵を率いて敵軍の側面を突いた。得意の鉄砲隊を率い、敵軍を混乱に陥れる。残る200の兵は、薦野増時が指揮し、偽の旗を立てて大友家の援軍が来たように見せかけた。敵軍は、たちまち混乱し、包囲を解いて退却を始めた。

「好機到来!全軍、追撃!」

 宗茂は、薦野増時、由布惟信、小野鎮幸ら1,000騎を率いて追撃を開始した。敵軍は、岩門庄久辺野に砦を築き、立て籠もっていた原田氏の将、笠興長隊300人を駆逐し、150人を討ち取った。さらに、宗茂は西の早良郡まで追撃し、原田親秀の早良城を焼き落城させるという大功を挙げた。

 11月、立花山城では、宗茂の武勇を称え、「御旗・御名字」の祝いが行われた。宗茂は、名を戸次弥七郎から立花左近将監に改め、立花家の後継者としての地位を確固たるものとした。12月、宗茂は、道雪に従い、宗像領侵攻にも出陣した。

 天正11年(1583年)3月、吉原口の防戦にて、宗茂は吉原貞安を討ち取るという武功を挙げた。4月、宗茂は、宗像氏貞の居城、許斐山城と、杉連並の龍徳城を落城させ、宗像氏を降伏させた。

若き獅子、立花宗茂は、その武勇を天下に轟かせ、立花家の名を高めていく。

キャスト案

* 立花宗茂:綾野剛

* 立花道雪:緒形直人

* 誾千代:満島ひかり

* 薦野増時:市村正親

* 由布惟信:阿部寛

* 小野鎮幸:佐々木蔵之介

* 吉原貞安:村上淳

* 宗像氏貞:竹野内豊

* 杉連並:香川照之

* 原田親秀:高嶋政伸

* 笠興長:松重豊

* 秋月種実:椎名桔平

* 問註所鑑景:宇梶剛士

見どころ

* 宗茂の初陣:若き宗茂が、いかにしてその武勇を天下に示したのか。

* 道雪との絆:宗茂と道雪の、父と子の絆を超えた強い絆。

* 戦国時代の戦:迫力のある合戦シーン。

* 人間ドラマ:戦乱の世を生きる人々の、愛と葛藤。

追加情報

* この物語は、史実に基づきながらも、フィクションとして描かれています。

* 登場人物の心情や人間関係も丁寧に描かれます。

* 戦国時代の戦の様子や、当時の政治状況などが描かれる予定です。

* 大規模な合戦シーンや、一騎打ちなど、迫力のあるアクションシーンが盛り込まれる予定です。

* 情景に合わせた音楽が、ドラマを盛り上げます。

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