第6話
(帰ってもいいかな……)
暑いし、と自分の作ったゼリーを口に入れながら考える。
「ご飯食べる人、いる?」
それほど大きくはない声だった。
滝や若葉に問いかけたようなものだったのに、その声に反応した人間は多かった。
「はいはい!王子!俺食べます!!」
「あっ、俺もー。遊馬よろしくー」
「涼しい感じの飯希望っす!」
「遊馬さんの飯ひさしぶりだあぁぁああ」
次々とあげられる声に由良は頷いてみせた。
「わかった。作ってから帰る」
「え、遊馬さん帰るんすか?」
「ん。暑いし」
暑いという単語をひたすら繰り返す由良に滝が苦笑を見せた。
「じゃあ、すんませんけどお願いします。俺も手伝うんで」
「ありがと」
滝の申し出はありがたく受け取るが、若葉はこの場で待機だ。
以前手伝ってもらった時に不器用さを発揮して悲惨なことになった。
若葉だけでなく嵐神の下っ端たちは不器用な人間が多かった。
由良は上の幹部部屋を使うことが多いが、一階の倉庫部分奥のスペースにも調理場は存在している。
普段は下にいる人間が使っているせいか、幹部部屋に比べて乱雑に物が散らかっていた。
滝が邪魔なものを由良の前からどかしていくが、ゴミに床を落としているだけに見える。
由良はあえて気にしないことにして、冷蔵庫からとってきた食材を並べ始めた。
何玉あるのか数えるのもめんどくさそうな大量の麺。
数種類の野菜に卵にハムに練り物。
由良は鍋を二つ取り出して同時に火にかけた。
「滝」
「はい」
「麺茹でられる?」
「任せてくださいっ!!」
びしっと背筋を伸ばして返事をした滝に由良がうっすらと笑った。
それを見た諌那が素早く割り込み、手を挙げた。
指先までまっすぐに伸びている。
「おれ……っ、ゆでっ……っ!」
必死に手を挙げながらアピールしてみせる。
「滝と一緒にやってくれる?」
滝にむけたものよりもわかりやすい笑顔を見せれば、諌那はご満悦で麺の入った袋を開け始めた。
滝も手伝いながら鍋に投入されていく麺たち。
それらを横目で見ながら由良は包丁を手に取った。
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