第5話
ゆったりとした動きで、部屋の隅に置いてある冷蔵庫に近づいた。
業務用の冷蔵庫と冷凍庫が一つずつ、階段の辺りに並んでいて、冷蔵庫を開けて中をのぞく。
由良は今日ここにきたときに幹部部屋に通された。
少しすれば帰ってくるだろうと思われたから。
それなのにしばらくしても誰も帰ってこない状況で、由良は諌那と二人だけの部屋で暇を持て余していた。
とくにすることもなく、暇つぶしをしようと思いつくのはキッチンに立つことくらい。
「滝。若葉」
由良は冷蔵庫から振り向いて、こっちこっちと手招きをしてみた。
「おー?」
「はい?」
頭上に?マークを浮かべながら近づいてくる二人。
その後ろからは諌那もついてきていた。
近づいてきた彼らに大きな冷蔵庫からトレーを出してひとつずつ渡していく。
「遊馬さん、これ……」
「こりゃいいぜ!!」
二人はトレーの上に載っているものを見て声をあげた。
由良の横まできた諌那も輝いた眼で覗き込んでいる。
作ったときに傍で見ていたのだから知っているはずなのだが、その驚いたような顔はどういうことなのか。
「さっき作ったやつ。総長さんたちこなそうだし、暑いし」
トレーの上には手のひら大の容器がいくつも並べられていて、中には透き通った青い色のゼリーが揺れている。
青色の中にはフルーツや違う色のゼリーが浮かんでいて、見た目も涼し気で綺麗。
いくつものトレーにのせたそれはここにいる全員分しっかりと用意されている。
食べない?と由良が言えば一斉に食いついた。
(そんなに張り切って暑くないの?)
せっかく涼しものを作ったのに、と由良はソファの上に戻りながらゼリーに群がる彼らを見つめた。
ソファに座った由良の横には諌那。
近くの椅子とソファには滝と若葉がゼリーを配り終えて戻ってきた。
不良と呼ばれる男たちが全員、揃いも揃って可愛らしいゼリーを食べているというのはなかなかに面白い光景だ。
「く~っ!うっめぇな!!俺ぁ遊馬みてぇな嫁が欲しいぜ」
「んっ!?げほっげほっ……」
若葉がしみじみと言った言葉に滝が盛大にせき込んだ。
「滝、何してんだ?」
「あ、いや、なんでもないっす……。若葉さん、遊馬さんは男っすよ?」
「わーってるよ!女だったらよかったのにな~。ま、この顔なら男でもいける気がすっけどな」
冗談交じりに言われた言葉にまた滝が焦っている。
「だめ……」
若葉と逆側の由良の隣に座っていた諌那が、由良と若葉の間に割り込んだ。
当の本人である由良はあいかわらず無関心のまま。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます