失恋 裏

 なんとなく、そんな気がしていた。

 さりげなく、私にアピールしていることも。

 私と会話するときは、ほかのことは違うところも。


 だから、告白されてしまったこと自体にはあんまり驚かなかった。


 「ごめんなさい」

 「なんで、かな」


 彼は一応聞いたつもりでいるだろうけれど、表情にはやっぱりか、と表れていた。


 「好きな人がいるんだ。

 みんなの期待に応えるために頑張っていて、

 でもちょっと寂しがり屋で、

 誰よりもかっこいいけど、

 本当は誰よりもかわいくて。

 誰にでも優しいところが大好きで。

 でも、私だけにしてくれないところがちょっぴり嫌いな。


 そんな、世界で一番大好きな人」


 「そっか。じゃあ、俺じゃ、勝てないな」

 「うん」


 じゃあね、と言って立ち去る。

 言葉に出して、はっきりと自覚した。やっぱり、私は花織が好きなんだ。

 会いたい。いつも花のように笑うあの顔に。

 聞きたい。いつも私を笑顔にしてくれるあの声を。

 触れたい。いつの間にか私とつないでいるあの手に。









 「ちくしょう、やっぱだめかぁ」


 壁にもたれるように、ずるずると座り込む。

 俺に、彼女をあんな顔にさせることはできない。


 「あんた、泣くほど一途のこと好きだったんだ」

 「笹ノ葉。見てたのか」

 「あんたが花織に見せつけるように告白したとこからね」

 「最初からじゃねぇか」

 「じゃ、私あんたが泣かせたヘタレ王子様の尻を蹴飛ばしに行くから」


 そう言って小さい同級生は行ってしまった。


 なんとなく察してはいた。

 だから二人の間に割り込むように会話をはさんだりもした。

 彼女にたくさん話しかける様にもした。


 そっか、俺、泣くほど好きだったのか。

 だからこんなに苦しいのか。

 だから。

 だから。


 「あぁ……。やっぱり好きだなぁ……」







 「花織、もう帰っちゃったのかな?」


 思わず漏れた独り言。校内の花織がいそうなところは探したけれど、いなかった。

 いつもは必ずどこかにいて、一緒に帰ろうとニコニコしているのに。


 「わっ」


 メッセージを送ろうとスマホを取り出した瞬間、当の本人から電話がかかってきた。


 「もしもし、一途?」

 「どしたのその声? 泣いてた?」

 「うぇっ、あっ、そんなこと、ないよ?」

 「ほんとに?」

 「ほんとだって大丈夫、大丈夫。それよりも、ね? 明日お休みでしょ?」

 「うん」

 「デートしない?」

 「いいよ」

 「大事な話をしたいんだ」

 「うん、私も」

 「そっか」

 「うん」

 「「じゃあ、またあしたね」」

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