伝説のねこまんま、いただきますニャ!
大蛇を振り切った2匹は、うすぐらの森を進んでいく。すると、明かりと共にいい匂いが漂ってきた。
「あ! あったニャ!」
そこにあったのは、トタン板でできた小さなお店。そこの大きな看板には『マタタビ亭』と書かれている。
念願のマタタビ亭。2匹は吸い込まれるように店の中に入って行った。
「ごめんくださ〜い! ……って、ええ!?」
店内に広がっていたのは、何とも信じ難い光景だった。
「ほっほっほ、ようやく来たか」
「すごいニャお前ら! 見違えたニャ!」
そこにいたのは、なんと長老とコテツだった。現状が飲み込めず、ユキとギンは目を丸くする。
「え、長老もコテツ兄ちゃんも、なんでいるのニャ?」
「何を隠そう、このマタタビ亭はワシの店なんじゃよ」
「「えええ〜!?」」
あまりのことに衝撃を隠せない2匹。実は長老とコテツは2匹を見送った後、別ルートを使って先回りしていたのだ。
驚く2匹を見て、長老とコテツは笑っていた。
「さてユキとギンよ。店に来たからには、何か食べる物があるんじゃないかの?」
「あ、そうだニャ!」
ユキとギンは無料券を取り出した。大切に握りしめ、クシャッとなった無料券を。
「「伝説のねこまんま、大盛りで!!」」
「かしこまりじゃ!」
注文を受けた長老は素早い手際で、あっという間に大盛りねこまんまを2匹分作ってしまった。
「お待ちどう! これが『伝説のねこまんま』じゃ!」
ついに2匹の前に現れた、伝説のねこまんま。眩しく輝いているそれは、まさしく伝説の名に相応しい逸品だった。
「「いただきます!!」」
ユキとギンは、それぞれ一口食べた。その瞬間、今まで感じたことのない感動が口の中に広がった。
噛み締めるたびに溢れる旨み。鼻を駆け抜ける鰹節の香り。濃厚だが決してくどくない出汁。全てが最高のねこまんまだった。
だが何より美味しさを引き立てているのは、ここに来るまでの苦労、それによる空腹であった。あまりの美味さに、2匹の目からは涙が溢れていた。
伝説のねこまんまは、2匹の身も心も満たしていったのだ。
「「う、美味いニャ〜〜!!!」」
まるで山のように盛られていたねこまんまを、2匹はあっという間に食べ終わった。丼には、米の一欠片も残っていなかった。
こうして、2匹の伝説のねこまんまを食べるための冒険は幕を閉じたのだった……
……が。
「お前ら、リバウンドしてニャい?」
数日後、2匹の体型はすっかり元通りになっていた。歩けば地面が悲鳴を上げ、風もないのに草木が揺れる。
「長老、どうすればいいニャ?」
「今回もいい案を持ってきたぞ。この村を西に出た先に、伝説の鮭ご飯が……」
「「ひぃ〜! もう伝説は懲り懲りだニャ〜!」」
完
ユキとギン 〜伝説のねこまんまへの道〜 オムちゃん @omuomuchan
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