第4話 情報収集
1日目、でっかい山の麓で夜を明かした。
2日目、山を登り、下り、そしてまた新たな山を登っていく。
3日目、ついに山の上の方からプロタ村を発見した。
プロタ村は思っていたよりも大きいようだったが、人の住んでいるであろう住宅はまばらで畑の広大さに目がいった。
見つけたとはいえ暗くなる時間帯だったのでそこで野宿し、目的地へ辿り着くのは4日目に回した。
そして4日目の昼頃、僕は遂にプロタ村に到着した。
「人の住む場所には思えないくらい空気が澄んでいる。」
ここで一生分の呼吸を貯蓄しておきたいくらいだ。
「着いた、と言っても入口があった訳じゃないし第1村人すら発見出来てないんだよな〜。」
そもそもここがプロタ村であるという確証すらないのだ。
ゲバンヌさんに貰った地図にはここだと示されているので、あっていると信じたいのだが。
「むむー、人が見当たらないのは困っちゃうな。」
人がいる気配が全然しない。
家自体はちらほらと見えるから人は住んでるんだろうけど。
「ごめんくださーい、って言うしかないかね。」
まあでも、人が見つかるまでここら辺を散歩してるのもいいかもしれない。
ここはペルべティアと違って騒がしくないし、空気も桁違いに良い。
今日は天気も良好なので絶好の散歩日和と言えるだろう。
それに、なにも全く行く宛てが無いわけではないのだ。
「お、見えてきた。」
「それに第1村人発見。」
山の上からプロタ村を見渡した時に、この村の集会場らしきところは把握しておいた。
予想通り人がいたし、早速あの人に聖剣のことについて聞くのがいいだろう。
「すいませーん。」
僕が尋ねたのは農家の格好をした元気そうなおばちゃんだ。
「あら、見ない顔ね。」
「もしかして旅人さん?」
「はい、ペルべティアから来ました。」
するとおばちゃんは心底驚いたような顔をする。
「冒険街から、それは遠かったでしょう。」
「旅人は偶に見るけど、冒険街から来た人は初めて見たわ。」
「一体何をしに?」
「ある剣を探しているんです。」
「ここには聖剣があるって言う噂をペルべティアで聞きまして。」
「何か知りませんか?」
「聖剣?残念ながらそんな大層なもののことなんて聞いたことないわねぇ。」
ふむ、まあ最初から知っている人と出会えるとも思っていない。
他の人にも地道に聞いていくしかないか。
「あー、そうですか。」
「一応聞きますけどここってプロタ村であってますか?」
「ええ、それはあってるわ。」
「ありがとうございます、これはお礼です。」
ペルべティアで買っておいたお菓子を手渡す。
「まあ、知らなかったのだからお礼なんていいのに。」
「でもありがとう、美味しく食べさせてもらうわ。」
その後は、おばちゃんに別れを告げ新しい人に聖剣のことについて聞きにいく。
「聖剣について知りませんか?」
「残念だけど知らないわねぇ。」
「聖剣について知りま───」
「知らないですね。」
「聖剣について知───」
「知らないわぁ。」
「聖剣につ───」
「知らん。」
・・・まじですかい。
「ここまで聞いて、誰1人知らないなんて。」
ガセ情報だったか?
今まで得たゲバンヌさんからの情報は全て真実だったから今回も真実だろうと思っていたが、今回の聖剣の噂はかなり怪しいものだった。
あの銭ゲバめ、ついにデマを売りおったのか。
「いや、それは無いな。」
「少なくともゲバンヌさんはこの噂を本当のものだと判断した。」
断言出来る。
なんせあの男は僕にこれを売ったのだ。
ゲバンヌさんは金にうるさい分、金を何よりも尊んでいる。
あの人は、自身がデマだと判断したものを売ることは絶対にしない。
値段をまけることも、会計をつけることも許さない男は自らが詐欺価格で販売することも許さないのだ。
「じゃあやはり、村長さんとやらを尋ねるしかないか。」
この村の人々に聖剣のことについて聞いて回った結果、聖剣の情報は何一つ手に入ら無かったが成果がゼロだったという訳でもない。
この村のことについて知りたいのなら、村長さんを尋ねるのが1番良いというのを何人かから聞いた。
幸い村長さんの家は、この集会場の近くらしい。
「ま、向かいますか。」
テクテクテクっと村長さんの家に到着する。
チリンチリーン
「ごめんくださーい!」
すると中から、こちらに向かってくる音が聞こえ───
「なんだい....って、知らない顔だねぇ。」
村長らしきおばあちゃんが出てきた。
「ペルべティアから来ました、マギア・スパーダです。」
「ほう、冒険街から。」
「それは珍しい、なんの用さね。」
「聖剣のことについて聞いて回ってるんですが、何か知りませんか?」
聖剣という言葉に、ここに来て初めて反応が見えた。
「ああ、聖剣のことかいな。」
「確かにそれは私しか知らんな。」
すると村長は少し考える様子を見せた後、
「ほれ、上がれ坊主。」
「茶でも飲みながら説明してやるさね。」
なるほど、どうやらアタリだったらしい。
「では、お邪魔します。」
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