第3話 宇宙紀元543年 帰還
僕は席について後ろからクラスを眺めた。
特段変わったことはなかった。
ただ、斜め前のアクアの席だけがぽっかりと穴が開いている。
先生が教科書を開いた。
「アオ君、隣のレナに教科書を見せてもらいなさい。」
「はい。」
僕は隣のレナに「教科書見せてくれる?」
「もちろん。いいわよ。」僕は机をレナの机に寄せた。「ありがとう。レナ。」
こうしてざわざわした空気の中、授業が始まる。
さっきまでアルファ星で6才だった僕だが、
この星での言葉も学力もはじまりの星、出身のせいか、すべてスーッと馴染んだ。
この星で僕は、16才か。
僕はレナから教科書を見せてもらいながら、
窓の外を見た。
運動場を横ぎるアクアの姿が見えた。
「何、やってんだ?」
レナが「アクアね。おかしな子なの。
”花が足りない。”って言ってわ、いろんなところに花の種をまいているのよ。」
「花の種?」
「そう、この星はすべて電気で植物を育てているの。木や草花も野菜もすべて。
ほらあの太陽見て。青色でしょう。
あれは電気でつくった太陽。
そして横にオレンジ色の小さな太陽が並んで見える?」
「あーあ、見える。あれが古代からある、もともとの自然の太陽よ。
あっ、ごめんなさい。つい、説明したけど、
このことはみんな知ってるわよね。」
とっさに話を合わせた。「もちろんさ。それで、あの青い太陽とアクアが、どうしたんだ?何か関係でも。」
「アクアが”もうすぐあの青い太陽が壊れる。”って言い始めたの。そして”早く花を咲かせないと手遅れになる”って言いだしたの。
そんなわけないって。
先生もみんなも言ったの。
あの子、悪い子じゃないけど、少しかわってて。
確かに最近、青い太陽の色が少し薄くなって、ニュースで言ってたけど。別に変ったことはないし。ただ。」
「ただ、どうしたんだい?」
「最近虫がいなくなったってみんなで騒ぎだして。私は虫が嫌いだから、別に虫なんか、いなくて逆にうれしいけど。
ハチまでいなくなってしまって。
大好きな、はちみつパンが食べれなくて、悲しいんだけど。
でもそれがあの青い太陽のせいだとアクアが言うの。
先生達にも青い太陽が壊れるなんて思ってもいなし。
それにアクアは虫たちがいなくなったのも
青い太陽のせいだと。
それで毎日授業に出なくって、あーやって花の種をまいてまわってるのよ。」
「花の種か。もし、まいた種の花がみんな咲いたらきれいだろうな。」
「えっ?アオ何か言った?」「いや。別に。」
その時だった。大きな爆発音がして空の青い太陽が大きな音とともに消えた。
みんな、生徒も先生達も教室の窓から顔を出した。青い太陽が消えていた。
と同時に人工太陽青い太陽で、さっきまで緑で生い茂っていた緑の木々も、草花も一気に枯れてしまった。
景色から色が消えた。
空が割れ、大粒の雨が降り出した。
雨は大きな水となり川となりまわりをのみこんでいった。
運動場にいたアクアを僕は探した
「アクアー!」僕は大声で叫んだ。
アクアの姿を見つけた。
アクアは宙に浮いていた。そして学校中に聞こえるように。
「先生。だから言ったでしょう。
青い太陽に頼りっきりになると大変なことになるって。だから花を咲かせてハチを戻して。
オレンジの太陽を大切にって。
もう、手遅れよ。」
僕は窓から顔を出して叫んだ。
「まだ、大丈夫だー!」
僕は紙ヒコーキを折って全知太陽ガルに飛ばした。
紙ヒコーキは空にまっすぐ飛んで行き。
すぐに声が。ガルの声だ。「マゼランが助けに来る。」
次の瞬間。空から翼のある大きなドラゴンが、羽根を「バタバタ」とさせて急降下。
川になった場所からみんなを救い。
大きな翼で空の雨を吹き飛ばした。
大きな風がビューンと通りすぎた後に空から
オレンジ色の太陽が。
古代太陽だ。自然の太陽。
気づくと全知太陽ガル。
ガルが目の前に。「間に合ったか。」
僕は「遅いぞ。ガル。」
「わるい。ここの太陽にもてなしのパーティーに誘われていたんだ。
しかし、もう大丈夫だ。おい、古代太陽。この星をすべてを照らしてやれ。」
「はい。」
この星の天に輝くオレンジ色の太陽がキラキラ輝き、地上を照らす。
一斉に地面から色とりどりの花がたくさん咲き乱れ始めた。
校舎の窓から生徒たち、先生たちの歓声に声。
「わあー!きれい!」「素晴らしい光景だ。」
太陽の光が照らす中、消えていた虫たちも花の蜜に集まる。もちろんハチも。
ガルが「時間だ。帰還するぞ。」
「えっ?帰還。」
大きな翼を広げてドラゴンのマゼランが。「アオ、アクア、俺様の背中に乗れ。」
僕らはマゼランの背中に飛び乗った。マゼランが大きく旋回。
僕は叫んだ。「レナー。教科書見せてくれてありがとう。」大きく手を振った。
そして僕らはガルと共に大きな光の中に消えた。
どのくらい時間がたっただろう。
僕は目を覚ました。横に。マゼラン。アオが草むらに寝ている。
2人とも子供の姿だ。
僕は2人を起こした。さっきの話をした。2人とも同じような夢を見たといった。
あくまでも夢だと。
僕は空を見た。相変わらず、4つの太陽が空から僕らを照らしている。
「ガル。」
「俺様を呼んだか?」
目の前に手のひらサイズの顔のついた太陽がいる。手足もある。
「ガル。さっきのは夢?だったのか?」
「夢だと思えば夢さ。」
僕は空を見た。太陽が3つだ。
目の前にガル。
「さっきのは夢じゃなかった。そうだよなガル。」
僕らは折神、オリカミを折ってアルファ星に今帰還。
紙ヒコーキ・帰還 京極道真 @mmmmm11111
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