おっさん大地に立つ(異世界)

「んが、なんじゃこりゃ!」


 自分のイビキで起きた旭は気が付けば森の中、仰向けに横になっていた。

 太くたくましい木の根元、緑の匂いが濃い、周りにも似たような木が大地にしっかりと根を張っていた。


 そういえばストレージを確認してって言われてたっけな、旭は思い出して使ってみた。

 ストレージは意識しただけで使えた。




 ! 旭さんへの贈り物




 頭に浮かんだのは使い慣れ親しんだパソコンのフォルダを開いたような画面イメージだったのでちょっと安心した。

 一つだけアイテムらしきものがあったのでそれを意識すると頭の中にマリス様の声でのボイスメッセージが流れてきた。


『旭さん無事についたようですね、その森は比較的に安全な森です、旭さんが寝ていたその場所はその日一日は結界が張ってあるので安心してください。これから旭さんにはスキルとステータス、ストレージの確認をしてもらいたいと思います。このボイスメッセージが流れた瞬間にこの辺りの通貨と装備などがストレージに入ってるのがわかると思います。それらを装備して使ってください。また、ショップとストレージは意識していただいた時に開けます、ステータスには旭さんのスキルなどが載っていますので隠したい、見せたくない時にはその箇所だけを非表示にすることもできます。また、ショップには前の世界の旭さんの貯蓄など財産分をチャージしておきましたので後ほど確認してください。最後にですが、申し訳ありませんが私の加護がちょっとだけ強く出てしまったようなのですが旭さんには問題ありませんのでそのままお使いください。それでは長くなってしまいましたが新しい生活を楽しんでくださいね。ちなみにこちらの世界では私は唯一神マリスとなっております、課金は必要ありませんよ?』


(あぁ、いいお声…これ繰り返し聞くことができるんだな、また今度聞こう…)


 おっさんが厄介オタク化した瞬間である。


「ステータスとストレージとスキルの確認と装備ね…」


(ストレージ)



 ・鋼の剣       攻撃力+30

 ・魔導士のローブ   防御力5  MP+100

 ・魔導士の服     防御力10 MP+100

 ・魔導士の靴     防御力5  MP+100

 ・マリスの指輪    MP消費50% MP回復増 魔力+50

 ・ヒールポーション   10個

 ・マナポーション    10個

 ・結界石        30個

 ・金貨 50枚

 ・銀貨 100枚

 ・銅貨 100枚


「お?目の前にウィンドウが出るわけではないのね、頭の中で見るイメージか、目の前に邪魔なウィンドウが出たりしないのはありがたいね。あと、時間停止と魔物を狩った時にそのまま入れると解体されて素材になるのは助かる!」


 ストレージの使い方と効果も頭の中に浮かんできた。

 血だらけになって解体しないでいいので安心である。


 そしておっさんは気が付く。


「マリス様の指輪!!指輪!?そう言う事…?性能もおかしい気がする、これいいの?うれしいけど性能より指輪ってほうが嬉しいわ!!」


 テンション爆上げ、おっさんの厄介オタク化が進行した瞬間である。


 いそいそと装備を着替える、もちろん指輪は左手である、どの指かは内緒である。


「剣が結構重いんだが…これストレージにしまって使うときに出したらダメなかな…」


 そう言いつつもマリス様からの贈り物なので装備するおっさんである。


(ステータス)


 キタノ アサヒ


【レベル】  1

【HP】    500  +300

【MP】   1500 +300  

【攻撃力】  20   +30

【防御力】  15   +25

【魔力】   200  +50

【素早さ】  15

【魅力】   10

【運】    30


【スキル】

 マリスの加護(大)

 光魔法

 ショップ

 アイテムストレージ

 無詠唱

 MP消費50%

 MP回復増



「お~魔法使いのステータスって感じだな、+がついてる数字は装備の数字っぽいな、マリス様の加護がちょっと強く出たってこの(大)がそうなのかな…確認の方法は…」


 またマリスの加護(大)を意識したところで詳細が出てきた。



 マリスの加護(大)


 ・言語理解

 ・丈夫な体

 ・魔法の才能

 ・隠蔽

 ・光魔法

 ・無詠唱



(なるほどステータスの隠蔽と光魔法と無詠唱はマリスの加護が(大)になった影響でスキルが付いたのか、これも助かる!)


 丈夫な体


 病気耐性 状態異常耐性(小)体力+300



 魔法の才能


 魔法の効果が強くなる、魔法がアレンジできる。



 隠蔽


 ステータスや装備など隠したい項目を消したりごまかすことができる。



 光魔法


 ・ヒール

 ・ハイヒール

 ・キュア

 ・ライトアロー



 無詠唱


 詠唱をしなくても魔法スキルを発動できる。通常、無詠唱は詠唱発動と比べると威力が落ちるがマリスの加護(大)のおかげで威力が落ちることは無い。



「マリス様の加護の威力が半端ない、もうこれだけで魔法使いやっていける気がするが…」


 MP回復増は1時間当たり最大MPの25パーセントの回復が見込めるようだ。


 MP50%は文字通り消費MPが半減するようである。


 両方凄いスキルな気がする、魔法を使うのが楽しみである。



「では、俺の一押しスキルのショップを確認だ、喉も乾いたしね!あ…」


 ショップを意識してしまったとたん脳裏にショップ画面が出てきた、脳裏に出す不可視モードとウィンドウを出す可視モードが選択できるようだ。


 残高がおおよそ500万になっている、貯金や車とか処分したらその位になるのか、思ったよりにあったなと感心する、見た目はまんま普段使っているネットショップと同じ雰囲気である。


 ドリンクを買うときに商品種別に乗り物があった、覗いてみると車やバイクなどがあった。


 さらに種別を見ていくとスキルの文字が…


(こ、これは…スキルも買えちゃうのか??)


 ドキドキしながらスキルの販売状態を確認する…

 だが世の中そんなに甘くない、なかなかにお値段がお高い。

 さっそく目についたスキルはラノベでおなじみの4属性が各500万、身体強化300万、状態異常耐性1000万、光魔法や闇魔法などは2000万、時空魔法などは1億である。

 

「むぅ、俺には高いが金持ちには買えそうだな…当面は光属性で頑張るしかないようだな…」


 だが旭は気が付いて無かった、この世界に複数属性を持つことが稀で、レアな時空属性などは持ち主がいない事を、そして今持っている光属性も十分にレアな事を。

 そう考えるとこのショップと言うスキルも十分すぎるほどチートなのである。

お金を貯めてコツコツとスキルが増やせるのだから…


 現実的にすぐスキルを買うのは少々厳しいのでいったん置いておいてドリンクを買う、緑茶である。思っていたよりも喉が渇いていたようで500lm丸まる一本はすぐに無くなった。

 空いたペットボトルをストレージに入れて魔法を使ってみることにした。


「光魔法の攻撃魔法はライトアローだけなのか、まぁ初めから攻撃魔法があるだけありがたいよな、マリス様ありがとうございます」


 本来マリスの加護(大)になっていなければチャージされていたお金で4属性の攻撃魔法をどれか一つ買って使う必要があったのだ、何から何までマリス様である。


「ライトアロー!!!」


 ドン!!


 近くに生えていた木にいきなり発砲ならぬ発魔法、発現した魔法は木に数センチ程だろうか刺さって少しして消えた。


「ん?確かに魔法は使えた…でも光魔法でも光の速さじゃないのか…?」


 光の魔法が目で追えたのに旭は違和感を覚えた…速度は十分早い、少なくとも旭自身は躱せそうにない、だが【光】なのである、思ったほどの速度では無かった。

 ちなみにステータスを確認すると一発あたり消費MPは5…MP消費50%なので本来は10らしい。 最大MPが1800ある旭にしたら撃ち放題なのだがやはり魔法の速度が気になる、そこでただ単に魔法を撃つのではなく速度を意識して撃ってみるがなんとなく早くなったという違いしか分からない、気のせいかもしれない。例えば飛んでくボールの速度が時速300kmが時速350㎞位になっても既に速いボールは300kmも350kmどちらも速いのだ、自分の反射神経を超えた速度はどれも速い…野球ボールの100㎞と150㎞はわかる、早いのだが違いはなんとなく分かる、要はバッティングセンターの速度である、だが小さい矢のような物が300㎞が350㎞になりましたでは違いはハッキリしない。

 旭の試行錯誤が始まった、光を収束するイメージをしたり単に魔力を増やしたり、長くしたり短くしたり、速度を意識して光のように速く、魔法の速度を意識して撃ちまくった、夜になり明け方になる頃にコツを掴んでようやく納得できるくらいの速度になった。

 的になっていた木はひどい惨状で生木なので燃えなかっただけで渇いていたら森林火災まっしぐらである。

 そうして完成した魔法が旭命名、光魔法【レイ】、速度は撃っているのが自分では無かったら分からない程、速度と威力がマシマシの一発あたりのMPコストが10とライトアローの一発あたり5のコストから見ると倍になっているが速度と威力が大幅にアップ、魔法の最適化と魔力を倍つぎ込んで完成した。

 イメージは以前遊んでいたPCの戦争ゲームで使っていた曳光弾のイメージ、魔法の改良など本来そうそう出来はしないのだが旭の持っている魔法の才能のおかげで出来た事なのである。

 

「マリス様、魔法の改良も出来ました、大変満足しています。ありがとうございます。」


 初日はほぼ魔法の改良で終わってしまった旭はマリス様に届いているかいないのか分らないお礼を言ってから適当にショップで買ったパンと飲み物で空腹を紛らわせた。

 後はストレージに入っていた半径5mは認識疎外と物理、魔法共に8時間は遮断結界を張れるというマリス特製結界石を置いてもう寝ることにする、もう既に空は明るくなってきていた。

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