怠惰で飽き性で気分屋のおっさんの異世界生活

noris

気が付いたら死んでたらしい

「あれ…?何だこれ、夢?」


 気がついたら自分の体も見えないような真っ暗な闇の中で漂っているようだった。


『起きましたか、私はアルテールと言う星の統括管理者をしております、マリスと言います。あなたはどのようにしてここへ迷い込んできたのか覚えておりますか?』


 優しそうな声は近いような遠いような不思議な感じで聞こえてくる。


「私は北野旭と言います、ベッドで横になってスマホでネットショップを見ていたら気がついたらここにいました。夢…ですよね?」


 買う気はなかったが気になる商品があったのでスマホで大手通販サイトを覗いていたはずだった。


『いえ、残念ながら夢ではありません、原因はわかりませんが確かにあなたここに居ます』


 どういう事だ?戻れるのだろうか…


『戻ることはできません、ここに居ると言う事は元の世界では亡くなっているでしょう』


 いきなりの衝撃の事実!!死んでしまっていた。

 しかも、あれやこれの処分とかもしていなかったし…せめて死ぬなら大好きなあのお店の海鮮丼を食べて置きたかった。

 あれ?これから俺はどうなるんだ?これもしかしてラノベな展開だろうか?


「あの〜異世界転生ってやつですか?」


『このまま私の管理する世界でしたら受け入れることも出来ます、そうでなければ元の世界で生まれ変わることになるでしょう』


 こ、これは控えめに言って大チャンスでは…元の世界でも別に結婚もしてなきゃしがらみもたいしてない。家族は居るが人はいつかは死ぬし遅いか早いかだ。すまん、弟たちよ、後は頼んだ。


「魔法とか…」


『あります、魔法と剣、あなたの世界でよく物語になっていますよね、そのようなイメージの世界です』


「いきま…」


 待て待て、聞いておくべきことはある!剣と魔法があっても俺にそれを使えなかったりしては意味がない!剣と魔法の世界でどちらも才能がないとか落とし穴があっては困る。


『多少でしたらご希望をお聞きすることも出来るでしょう』


 はうぅぅぅん!好条件!!心臓がドッドッドッとうるさい、行きたい。俺も憧れてた世界、面倒なしがらみもなく0からスタート!

 でも、魔王を倒せとか世界を救えとかは嫌だな〜


『そう言う使命はありません、好きに生きていただいて結構です』


 あれ、さっきから喋ってないことも会話が出来てる…


『はい、考えている事も分かりますよ』


「便利ですね…因みに先ほどの希望を聞いてくれると言う事はどのような…?」


 しっかり確認は大事なのだ。

 あまり迷惑を人にかけるのも嫌だし、マリスさんの声がとても綺麗なのだ。きっとご本人もとても美人、なおさら変なことを言って困らせたくはない。


『あら、ありがとうございます。希望とは私の世界ではスキルがあり初期スキルの希望や種族や元の世界の姿のままの転移や新しくこちらの世界で1から始める転生という形を取ることも出来ます』


「あの、元の世界の家族に俺が死んで辛い思いをして欲しく無いのでそこまで悲しんだりしないように出来ますか?」


『はい、あなたが亡くなってご家族の方が悲しまないと言う事は無いでしょう。ただし、変に引きずったり、心労で体を壊すと言うことが無い程度には悲しみを抑える事はできるでしょう』


「ありがとうございます。やはり少し気になってしまいまして…」


『ふふ…他の心残りの処分したかった物もこちらでやっておきますよ』


「ありがとうございまぁぁぁす!!」


 いや、人には見れたく無い物もあるだろ?

 pcなんてもう一人の俺だ、見られたら俺の頭の中を見られるのと一緒だからな。


『それではご希望をお聞きいたしますが、ただし過ぎたる力は良くありません、あなたの為にはなりませんので考えて発言をしてください』


 過ぎたる力は俺に良くないか…なんか嬉しいな、俺の事を考えて忠告してくれるってマリスさん、いや、マリス様ありがとうございます。


 スキルか、ここは大事だな。魔法と剣の世界だから魔法を使いたい、魔法を使える才能と丈夫な身体、あと食いしん坊な俺は食事が大事!それなら何でも買えるショッピング機能が欲しいな、魔法は才能があれば練習出来るし、体が丈夫なら怪我や病気もしにくいだろう、それに食事の心配さえなければ生きていける!言葉の壁は気合だ!心配だが本当に必要なスキルだけお願いしよう。海外旅行をした時にもジェスチャーなどで何とかなってたしな…


『わかりました、魔法の才能、丈夫な体、ショッピング機能ですね。このショッピング機能には制限をかけさせてもらいます、何でも買えるとなると問題が出てくるので買えない物はスキルには出て来ません。よろしいですか?』


「はい、ありがとうございます。あとは特に希望はありません、種族も生まれもこのままでお願いします。」


 『よろしいのですか?過去に私の世界に送った人達はもっと色々要求が有りましたが?』


 十分じゃないか?あれか??言語能力とかアイテムボックスみたいな物とかはあったらいいな、言葉が通じなかったら覚えるまで苦労するしアイテムボックスなんて定番だしな、いいのだろうか…言うだけ言ってみようか。


『えぇ、問題ありません、でしたら魔法の才能と丈夫な体と言語理解は私の加護と言うことでスキルはショッピング機能とアイテムボックスよりアイテムストレージの方が便利ですのでそちらにいたしましょう。』


 ぐっ…言うだけ言ってみようとした言語理解やアイテムボックスを更に上位スキルにしてくれるなんてありがたい。どうやってお礼をしたらいいのだろうか、課金か?マリス様に課金するにはどこに課金したらいいのだろう…教会とかあるのでしょうか!?


「ありがとうございます!!本当に助かります!どうしたらいいのでしょうか?課金でいいですか?どこに…」


『落ち着いてください、残してきてしまった家族を真っ先に心配する気持ちに、スキルの話の際にも多くを求めない謙虚な所など好感が持てます。過去には他者を害するスキルを求めたり、大きすぎる力を求めたりと困った方々も居たのです』


 俺は大きなことを成したいとかは思っていない。それなりに楽しく暮らせれば幸せなのだ。魔法の才能は俺自身の興味、ネットショッピングはあれば生活に便利、丈夫な体は健康は大事だし、言語理解は正直自分で覚えようかと思っていたしアイテムストレージなんてマリス様からのプレゼントだ助かる…

 

「マリス様こんなに良くしていただいてもよろしいのでしょうか、俺は特別何ができるとは思っておりません」


『かまいませんよ、旭さんの思うように過ごしてください、旭さんでしたら心配も無いでしょうし私も安心して送り出せます』


 こんなに良くしてもらったのはいつぶりだろうか、感動で心が一杯になった。


『そろそろ時間でしょうか、旭さん心の準備はよろしいですか?』


「はい、楽しみで仕方ありません。よろしくお願いします」


 もう楽しみで仕方がない、きっと尻尾があったらブンブン振り回していることだろう。


『はい、では安全な所に転移しますね、向こうについたらストレージを確認してください。旭さんの新たな生活に幸あらんことを、人生を楽しんでくださいね』


 マリス様の言葉と共にハッキリしていた意識が遠のいていく…


「マリス様ありがとうございました!あっ!!マリス様に課金するにはどこに課金したらいいですか~??」



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 不思議な人でした、ここでは人の心は私に直接響いてきますが終始嫌な気持ちは届いて来ませんでした。

 過去には危険なスキルを要求するような方や異世界に行けるとなるといきなり横柄になる方、延々と多数の必要スキルを要求する方もいましたが、旭さんは危険な物も必要とせず、要求スキルは最小限に、多少の不便は努力で克服しようとしていました。応援もしたくなります。


 ここからたまに元気な姿を見るくらいはいいですよね。

 旭さんに唯一神マリスからの祝福を…

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