40歳は豆腐メンタル

「んがっ!」

 やはり自分のイビキで目が覚める6時間は寝れた気がする…

 目が覚めて周りを見渡すと数本の木が倒れている、ただの自然破壊にならないように活用したいと思う、もちろんストレージだ。いろいろな機能が付いているようである、PCのフォルダのような見た目で中で何個も分かれている…今から入れるフォルダは乾燥ができるフォルダにして薪にする為に入れて置く。

 その他にも時間停止フォルダや時間遅延と冷却効果のあるフォルダ等、いろいろな種類のフォルダを作った。


「ショップで朝食を買って食べてから出発するか」


 旭の今日の朝食は北海道のコンビニチェーンホットシェフで売ってるカツ丼である、しかも大盛り!お茶も忘れない。

 朝飯を食べながら旭は考える、俺は魔法寄りのステータスだ、近寄られたら何も対応が出来ない可能性がある…やはり何かスキルを買っておくべきだろうかと考えていた。


 ショップのチャージに約500万、マリス様が持たせてくれた金貨が50枚で一枚10万ほどだからこちらも500万となる、計1000万は使うことは出来る。

 銀貨は生活費のために残して置く、このひ弱なステータスを補うには身体強化スキルを買うか魔法のフィジカルアップを買うか迷う、それぞれの違いは自己スキルの身体強化は自分にしか掛けられないのと肉体面の強化率が若干フィジカルアップより高いみたいだ。

 補助魔法のフィジカルアップの長所は他者にも掛ける事が出来る点と身体強化よりも脳の強化が強めなので頭の回転が早くなるらしい、あとなんと言っても俺がアレンジ出来る!!

 魔法使いとして生きるのなら考えるまでも無い、フィジカルアップ一択だろうな。


「せっかく異世界に来たのだし、戦って足りないものを感じてみるのもいいよな…」


 せっかく魔法もアレンジして自信作が出来たのだ、そうと決まれば旭の行動は早かった、食べ終わったゴミを片付けて、剣を剣帯に挿し、結界石をストレージにぶち込んだ。


 早速森を移動し始める、マリス様は比較的安全と言っていただけあって確かに何も出ない。30分ほど時間慣れない森を移動ししていた旭は汗だくになっていた。


「ハァッハァ、結構しんどい、剣が、重い…」


 慣れない森、悪い足場、またがないといけない古い倒木、そして腰の剣…道なき森を歩くのは思った以上に大変だった。

 何せたまに引っかかる剣、これが結構曲者で体の重心を狂わせるのだ重さは1,5Lのペットボトルより少し重いかもしれない。

 そんな中での森歩き、圧倒的運動不足の40歳おっさんは剣をストレージに入れちゃおうかとグラつき始めている。

 マリス様に頂いた剣だから身に着けていたいと若干意地になっているのも確か、フラフラしながら進んでいく内に前の方が開けていることに気がついた。


「森を抜けられるのか…?」


 旭は期待した、そして抜けた先にあったのは少し大きめな泉、直径50m位はありそうだ。

 森を抜けたわけではないのは残念だがちょっと休む事にした。

 休憩するにはもってこいな場所だと理由付けて汗だくになったので取り敢えず水分補給、ショップで購入したお茶をが一気に空になった。


「茶が染み渡る…俺は本当に体力が無いんだな〜」


 ボソりと呟く、少しぼんやりしていたら泉の反対側から立派な角を持った牡鹿が出てきた、ここは水場なのだろう、その後からも数体の鹿が出てきた、見慣れない人間に警戒をしている牡鹿を横に後から出てきた鹿たちが水を飲む、牡鹿が警戒を緩めて水を飲み始めようとした時、鹿たちが一斉に来た方角を警戒し始めた。そして少ししたら一斉に左の方へ走って行き森に消えた。

 これには鈍い旭も流石に分かる、何かが来る、使い慣れて無い剣を抜いて戦闘態勢に入る。

 少しして森の木々の隙間から歩いてくる人影が見えた、確実に他の人型の生物とエンカウントしてしまう、旭の心臓はうるさい程バクバクなっている。


(現地人とかだったらいいな…)


 おっさんは正直ヘタレていた。

 そして出て来たのはボロボロの革鎧を着た少し体格のいいゴブリン…錆だらけの抜き身の剣を持っている、その後ろからイメージ通りの腰蓑だけのゴブリン2体こちらはこん棒のような物…


(ゴブリンだぁ〜!!もう攻撃しても良いか!?ゴブリンっぽいし敵だよな?)


 日本にいて暴力とはほぼ無縁に生きて来たおっさんにとって異世界で魔物と思われる生物であってもいきなり攻撃をしかける事は出来なかった…


(ラノベではゴブリンでも友好的なゴブリンも居たから!あれはどっちなんだ!?武器を持ってるし怖いんだが!?敵かどうかハッキリしてくれ!)


 おっさんの心臓は人生過去最大級にバクバクしている、正直撃ちたい、撃って楽になりたい、そう思ってゴブリンを凝視して居ると革鎧を着たゴブリンと目が合った。


 …


「ゲヒャ!!ゲヒャー!」


 ほんの一瞬の後、革鎧のゴブリンが声を上げた。

 それを聞いた他のゴブリンもこちらに気がついて武器を振り回しながらバラバラに走って来た。


「助かる、どう見ても殺意が有るよな、いいよな……レイ!!」


 正直分かりやすい敵対行動を取ってくれて助かった、武器を振り回しながら走って来て敵意は無かったなんてあり得ない、旭の心の安全装置が外れた瞬間だった。


 念の為各ゴブリンに2発ずつのレイを撃った、どのくらいで倒せるか分からなかった為だ。

 レイには発射音などは無い、一瞬光ったかと思ったらゴブリン達が派手に倒れて動かなくなったのだ。

 体の奥から何かが溢れるような感覚があった。


「やったよな…?」


 ゴブリンから目が離せない。

 第三者の視点で見ることが出来ていたら何故そんなセリフを今?とか旭も言っていたに違いない。

 当事者になった事でつい言葉が出てしまったのだ。

 フラグを立てたかもしれないと、考えもしないままジリジリと近づく、旭の中では戦闘はまだ継続中であった。


 結局は10mくらい離れた所でもう一度一発ずつトドメと言い訳をしながらレイを撃ち込んで死んでいることを確認してやっと旭の初戦闘は終わった。


「これは結構クルな、体の疲れもあるけど精神的にすごく疲れた…」


 戦闘自体はごく簡単なものであった、エンカウントしてレイを撃ち込んで戦闘終了なのだ。

 戦闘に慣れた人間ならなんてことは無いレベルの出来事である。

 だが初めてづくしで常に極限に緊張しっぱなしだった旭は精魂疲れ果てた。


「死体を回収して戻ろう、今日はもう何もしたくない…」


 死体をストレージに入れて歩いてきた方向に歩き出した、ここに居てはまた魔物が水辺に来るかもしれないからだ。


 しばらく歩いてほんの少し木の生えてない空間があったのでそこで今日はもう休むことにした。

 だが、休んでいる時にまたゴブリンに遭遇するかもしれないと思うと気が気じゃなかったのでショップを開いて拠点に出来そうな物を探した。

 結果海上コンテナをコンテナハウスに改造した商品を見つけて購入、ついでにベッドのマットレスも買ってお値段合計約60万、後はコンテナハウスをストレージから出してその中にマットレスを敷いて更にマリス様から頂いた新品の結界石を設置してからマットレスに倒れ込んだ。


(ラノベの主人公たちはスゲーわ…)


 旭は異世界に来て魔物を倒したはいいが心が疲れ切ってしまった為、弱気になりながら眠りについた。

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