第4話 相棒登場!! 被害者は誰だ!?

警察署を出るとすっかり朝だった。

強い仲間を探さなければ。


肉体的な強さはもとより、俺がそいつのことを信用できること

そして、そいつも俺のことを信用してくれること。


それが譲れない条件だ。


でも、そんな奴はそうそういないし

赤沢さんの仇討ちをすると決めてから

誰に声をかけるか、大方の算段はついていた。


ひと眠りしてから、俺はそいつに電話を掛け

これから新宿三丁目のフレッシュネスバーガーで待ち合わせだ。


俺は注文したものをとうの昔に食い終わり、奥の席で

ぼーっとしていると、入り口から「小山!」と呼ぶ声がきこえた。


プロレスラーのようなガタイの男がブンブン手を振っている。

黒いサングラス。テカテカのオールバック。スターリンみたいな立派な口髭。


最後に会ったのは高校の卒業式だったが

あいつはあいつのまま、元気にやっていたらしい。


「マルセロ!よく来てくれた!!」

俺たちはガッチリ強い握手を交わし、揃って席に着いた。


林寺はやしじマルセロ。同郷の群馬出身。

知り合ったのは中学からだが、マルセロはその頃からデカくて目立つやつだった。


日系ブラジル二世の親父さんがブラジリアン柔術の道場をやっていて

マルセロ自身も相当な腕前だった。


「高校の、誰だっけ? マルセロがよろず悩み相談所みたいな仕事を

やるようになったって小耳に挟んでさ。

昨晩のエレベータの事件知ってるか? あれ俺の職場なんだ」


「新宿エレベータ墜落事件ね。小山の職場だったのか。世間は狭いね〜」


「全くそうだね。それで、その先輩の死に方がおかしいんだ。

首が無くなっていて…。それだけなら、まだいい。

実はその前の夜にエロ動画見ようとしたんだよ。

そしたら、広告に出てきた若い女の子がLIVE中継で首を斬られて死んだ。

俺には、この二つの事件は関係があるようにしか思えないんだ」


「その女の子の特徴とか、動画で覚えていることは他にあるか?」


俺はてっきり、普段どんな動画見てるんだ、

グロ動画ばかり漁ってるのか?とかなんとか

茶化されるものだとばかり思ってた。それが怖くて誰にも言えなかった。


けれど、マルセロがそれに触れなかったことで

ああ、本当にコイツに連絡して正解だったんだと実感した。


「控えめに言ってすごく可愛い子だったね。

たぶん高校生くらいの、まだ大人になっていない年頃の子だ

少し垂れ目気味の瞳で、闇社会や夜の世界とは無縁そうな、

いいおうちで大切に育てられたお嬢さんって感じだった」


「服は? 脱がされていたか?」


「そういえば、白いブラウスを着ていた。

そうだ!それで俺はあの子が高校生なんじゃないかと思ったんだ。

あれは制服のブラウスだ」


「校章やエンブレムはあったか? スカートの柄は?」


「思い出せない…。すまん、思い出さないとな。

色合いなら何とか…。確かブレザーだった」


マルセロはデカめのクラッチバッグからiPadを取り出して

「描いてみろ!ブレザーのスカートは似てるようで全部違うんだ」

と言った。



俺は、Apple Pencilを片手に、自分の出来の悪い脳漿と格闘していた。

脳裏に焼きつくくらい可愛いなって思う子がいても、

服装まで覚えているか? 普通?


でも、そんな泣き言など言ってられない。

被害者の高校がどこか分かったら、一気に糸口が見つかるんだ。


俺はぶるぶる震える手でカラーパレットから色を探し出した。

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