2.命令(5)
けれども、
仄かながらも険を帯びつつある調子にて。
「
然れどな、その冷ややかさは与えられた任務の意義に向けられることも多くてな。
何故に此度の任務を果たさねばならぬのだと延々たる議論になりかねん。
まさしく『水掛け論』ぞ。
仮に任務を受けたにしても、己の遣り方に拘る癖もまた強いのよ。
勝手なことをされては困る今回の任務には不向きぞ」
そう告げた
不機嫌がいよいよ募りつつあることの証だ。
私は泣き出したいような気持ちに見舞われる。
なけなしの勇気を振り絞って二度までも
説得出来ないだけならまだしも、
「
「ひぃっ!
はっ、はいっ!」と、私は慌てて返事を返す。
「
いやいや、何とも驚いたものぞ。
四魔侯のご歴々を招いての会議の席ではお言葉を慎まれておられるが故、此度の冗舌さには大変に驚かさましたぞ」
私は思わず息を呑む。
冷ややかな思いが背筋を駆け上がる。
そうなのだ。
けれども、私がその場で積極的に発言することなんて殆ど無いのだ。
私はそんな話の輪に加わることも出来ずにいて、無言のままで俯いているだけだ。
時折、
自分自身の意見を口にすることなど在りはしないのだ。
もしも自分から何かを発言し、そのことで
「いや、此度は
これからの会議では、是非とも先程のように冗舌にお話して下され」
蔑むような笑いを帯びた声にてそう告げた
私は必死に考えを巡らし、それから再び口を開く。
「あっ、あの……、
今しばらく!
どうか、私めの話をお聞き下さいませっ!」
自分の声音が惨めな程に震えているのがはっきりと分かった。
けれども、ここで何としてでも粘らないと、私は勇者一味と相見えてしまうことになるのだ。
それだけは絶対に嫌だ!
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