世界にひとつだけのコレクション
私がメルカリを始めた頃には、「買う」よりも「売る」ことに意識が行っていました。
出品したものがお金になることが嬉しくてたまらなかったのが、気づかないうちに違うものに喜びを見出すようになりました。
それが、
手紙を直筆で書く、ということです。
まずは、控えめにデザインされた小さなメッセージカードを100円ショップで手に入れました。
次に、オリジナルサイン作りです。
これが、かなり難しいのです。ローマ字が整いすぎても崩れすぎてもダメだからです。
私が目指すところは、「外国人が映画の中でサインするようなカッコいいもの」なので、来る日も来る日も練習しました。
「これだ」と思うサインを決めるまでの課程が、私にとっては一番楽しめる瞬間だったような気がします。
それは、長期連休そのものではなくて連休の前日が一番ウキウキしていたり、仕事においても上手く業務をこなせるようになった状態よりも、段取りが悪いところから脱出できる方法を試行錯誤している時が一番やる気に溢れていたり、ということと似ています。
メルカリでは、商品が届いた後、お互いの評価をコメントして、その取引が終了という流れになっています。
ある時、そのコメントの中に「お手紙もありがとうございました」というひと言が添えられていました。私は吹きこぼれる喜びを抑えられない気持ちになりながら、それを何度も見ていました。
そんなことを思い出しながら、紺色のA6サイズのフォトアルバムを久しぶりに開けました。これは、買い物をした時に出品者が贈ってくれた手紙を保管しているものです。
手紙の裏側にはメリカリネームと買った物を記入してあります。
マスキングテープを使って装飾してある手紙、英語のメッセージを添えてある手紙、シンプルにひと言だけ書いてある手紙、ゴージャスな花柄の手紙など、私と同じ想いでメルカリを楽しんでいる人が、これほど多くいるのだと、これ以上ない嬉しさに浸っていました。
私が手紙を大事に思うのは、きっと祖母の影響です。おばあちゃん子の私にとって、祖母は最強の師であり先輩でもありました。
今では思い出だけになってしまった祖母ですが、小学校から高校までのお弁当は祖母が担当してくれました。そこには毎回必ず、甘い卵焼きと手紙が入っていました。
優しい言葉で綴られた手紙です。
特に小学校でお弁当が必要なのは、遠足やキャンプなどの学校行事の時です。そしてその懐かしい記憶に重なるのは、手紙の存在です。
次々と懐かしい気持ちが蘇ってくる中、まどろみながら今日もメルカリで掘り出し物を探しているうちに、夜は更けていきました。
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