第16話 涙

 泥だらけの道を歩いている。悲しみとやりきれない思いが交差して涙が止まらない、、だけど、、泣くのは今だけだ、、師匠の思いを無駄にしないように俺は強く生きると心に誓った。姫の待つあの場所に急ごう、ずべての涙を出しきった俺は前へ進み、何も考えないように全力で走りだした。


 ようやく、姫の待つ場所に戻ってきた。気がつくと雨はすっかり止んでいた。姫は一人ぽつんと座っていた。心配そうな顔でこちらを見つめいる。


「島、、小次郎は?」

「姫、、、、、、師匠は遠くに行ってしまわれた」

 それで、姫は全てを悟り、、力なく頷いた、、

「そうか、、、、、」


 その後、俺たちは、師匠の小屋に戻ってきた。その頃には、もう体は心身ともに疲れきっていた。軽く夕食を終え、もうあたりも暗かったので寝ることにした。


 体は疲れていても、、どうしても目をつぶると、師匠のことを思い出す。心が押しつぶされそうになるのを必死に我慢をしていると、、姫がそっと抱きしめてくれた。


「島、泣きたい時に我慢するのは愚かじゃ」

「悲しみの涙は、故人とお別れするのに必要じゃ」

 姫の言葉が心に染み、俺の中の一本の線が切れた。その夜、俺は、姫の小さい体に抱きしめながら、声が枯れるくらい泣いた。


 そして、夜が明け、、またいつもの日常が始まる。昨晩の姫のやさしさに触れて、、なんだかすっかり気力は戻っていた。


 それにしても、、なんだが、、いい匂いがする。甘く花のような、、それと、、この抱き枕なんだか暖かいし柔らかい。


 そこで、ちと嫌な予感がした。恐る恐る目を開けてみると、、


「おぬし、、いつまで、、抱きついておるのじゃ!」

 凄く冷やかな目線で、なんだが、ご機嫌斜めの、ご様子。昨日までの天使モードはいずこに??

「起きたら離れぬか!うっとうしい!」

 少し、頬を染めながら、いつものツンを頂戴いたしました。ご馳走様でございます。


 現代であれば、JKとおっさんとのワンナイトハグ!といっても、、それ以上、何もしてないけど。

だが犯罪行為だな、、一生の思い出ありがとう!


 「またしょうもないことを考えておるな!おぬし!起きたら支度をしろ!行くぞ!」

「どこに行くのですか?」

「本当に島は、まぬけじゃのぉー」

「また新たな敵がくるかもしれん、山をくだり人里まで避難が先決じゃ!」


 もう少し、姫との朝を楽しみたかったが、身の危険が迫っているので、急いで身支度を済ませた。


「では、、行くぞ、、島!」

「はい!どこまでも、お供します姫!」

「何を調子のいいことを言っておる、、バカタレが、、、」

 昨日と打って変わって俺は気持ちを切り替えた。いつまでも、くよくよしていたら姫が心配するし、なにより、強く生きてやる!もう誰も傷つかないように、、、


 そして、島達は人里を目指して山を下るのであった。


続く

 

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