じんじんかいかい
藤泉都理
じんじんかいかい
「じんじんかいかいします」
「じんじんかいかい?」
鏡餅は、否、鏡餅のような防寒着で身を守っている博士がそれでも、しもやけになってしまう強情で軟弱で律儀なつま先に、椅子に座りながら台座に足を乗せて、薬を塗りたくっている時だった。
自らが創り出した最高傑作であるAIロボットが話しかけてきたのである。
「はい。つま先に薬を塗っている博士を見ていると、私のつま先もじんじんかいかいします。これは、博士の事をまた一つ、理解できた、という事でしょうか?」
「ああ。うん。いや。もしかしたら故障した可能性もある。今からラボに行って検査してみよう」
「その前に私も塗ってみたいです」
「薬をか?」
「はい」
(塗っても効果はないと知っているだろう。けど)
「じゃあ。はい」
「ありがとうございます」
博士からアルミチューブの塗り薬を受け取ったAIロボットは、蓋を開けるとゆっくりと押してちょんびりと出た塗り薬を付けた親指と人差し指で、つま先に塗り込んでいった。
「よくな~れよくな~れ。指圧と塗り薬により血よ滞りなく流れたまえ~。しもやけを治したまえ~」
「おう。よく覚えていたな」
「へへ。博士の最高傑作ですからね」
「おう。おまえは俺の最高傑作だ」
「えっへん」
「じゃあ一緒に」
「「よくな~れよくな~れ。指圧と塗り薬により血よ滞りなく流れたまえ~。しもやけを治したまえ~めっせめっせしもやけめっせ~~~」」
「はいもっとどす黒い感情を込めて」
「はい!」
(2025.1.4)
じんじんかいかい 藤泉都理 @fujitori
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