第14話



〜勇者プレイヤーサイドその①〜



小さいNPCが召喚に紛れてたって聞いてもふーんって思ってたし、どうせNPCだしなとしか思って無かった。


最初は突然知らない場所に飛ばされて不安な気持ちになったけど、ゲームキャラのままだったし仲間も近くに居て俺らを喚んだって言う人たちからも下にも置かぬ接待をされて舞い上がってたんだ。


俺らは・・・俺は、特別なんだって。



でもゲームでは無かった痛みに、魔物の威圧に、徐々に現実を感じて我に返った。


・・・パーティー内で一番に夢から覚めたのは俺だった。


俺の職業は魔法使いで戦列は一番後ろのポジション。


ゲーム時では戦列的に比較的安全なポジションだった訳だが、ギルドで依頼を受け、いざ討伐となった時に魔物の威圧で固まった仲間達を抜け真っ先に狙われた俺の右腕は・・・あっさりとその魔物に噛み砕かれ、喰われた。




———・・・その後の記憶は全く無い。




かなりの痛みと、俺の叫びで我に返った仲間が何とかその魔物を倒して持ってたポーションをぶっ掛けてくれたから五体満足でベッドの上に今寝転んでいられるのだと起きてからの説明で理解はしたけれど、俺の心はもう、ボッキリと折れてしまっていた。


仲間が使ってくれたポーションは手持ちのインベントリから返したが、再び一緒に組んで冒険は無理だった。


早々の戦線離脱には国のお役人さんからは多少渋られはしたが、勇者がたくさん居た事と、俺のやつれ具合・・・それに、自分の怪我を治したポーションの幾つかを引き換えに出したら案外あっさり勇者組織からは抜けられた。


“勇者”などと持て囃されて有頂天になっていたけれど・・・ここはちゃんと“現実”なんだ、と改めて認識した・・・怪我をしてでは遅い気もするが、ここで気づけた自分に、まだ生きていける可能性に涙が出た。


“腕試し”と称して挑んだ只の討伐でアレだったのだ。

到底スタンピードで活躍できるなんて微塵も思えなかった。


改めて考えなくても、勇者は同郷の只の日本人である。


・・・戦いに慣れている奴らが居たとしても、ギリギリ越えられるかどうかと言ったところでは無いだろうか・・・少なくとも俺は主人公の器じゃ無かった。


勿論仲間も違うと思う・・・良い奴らだし、助けてくれた事には感謝したが、俺の説得では夢からは醒まさせてやれなかったな・・・。


この国に渡したポーションがあいつらに使われてくれれば良いな、と思うが・・・。


あの反応的には上のお偉いさんに使われて終わりだろうなあ。


・・・まあ、あいつらは個人で幾つも所持しているだろうから、俺が心配しても仕方がないか。


その後商業ギルドにてポーションが高額取引されたのを目の当たりにして、交渉時ちょっと渡し過ぎたかも・・・と後悔したりもしたが、だからこそあんなに簡単に抜けられたんだろうなとも思い直した。


・・・そう思わないとやってられない位には高額で取引されたからなあ・・・自分の命と引き換えだったんだ、と無理矢理納得した。


別の意味で心が折れそうである・・・はあ。


何とか生き残る為にそのお金で冒険者ギルドに頼んで、ギルド内の暇してる冒険者達に稽古をつけてもらったりして日々を過ごした。


・・・それからも決して街からは出られなかったけれど。



——————・・・運命の日、俺が一体どうなったかはご想像にお任せするぜ・・・







〜勇者プレイヤーサイドその②〜



私は日本ではしがない独り身リーマン。

年齢=彼女いない歴更新中で、近くをすれ違っただけの女学生に


「キモ〜」


とくすくす笑いをされるごく平凡な一般社会人だった。



そんな私を


「勇者様っ!!」


と言って国を挙げて迎え入れてくれて、衣食住は全て完全保証。


可愛い奥さんに親友も出来て、勿論私自身が“勇者”と言う呼称に相応しくなる様に・・・皆の期待に応えるべく、鍛錬や魔物討伐で実戦経験も積んでいたんだ。


・・・最初はゲームと違う部分もあって戸惑ったり多少怪我もしたけれど、順調に“キャラ”を育て上げていた。


私は慢心していないつもりだった・・・日々努力を重ねてたし、周りにも心配される位頑張っていたから。



——————・・・私は“勇者”を舐めてたのだ・・・。



この国には昔から冒険者と言う主に戦いの専門職みたいな人達が居て。

依頼があれば何でもやるって言う傭兵ギルドもある。

小さい頃から鍛錬を積んで親から子へ技術継承を重ね、それに各々が自己研磨して強さを磨き、自分の国を守ろうと必死な兵士が居る。


それでも足りない、そこを補う為に召喚された・・・私達は国の希望となる勇者様の筈で、周りの皆も勿論そのつもりであったのだ。


“勇者”への期待値は自分が思うよりも遥かに高く、されど現実は残酷だった。


私達は確かにゲームキャラのまま転移したし、レベルもスキルもカンストまではいかないものの、トップレベルだった・・・ゲームの中では。




一面魔物に染まった大地に


「こんなの無理だろっ!?」


と誰かが叫んだ。




「皆、やるぞっ!!」


「「「おうっ!!」」」


「散っっっ開っ!」


「くっそ、やったらーっ!」


と叫んでいたプレイヤー達が次々と魔物の群れの波に呑まれていく。




散々、煽てられ調子に乗って横柄になってた者達は


「や、やってられっか!!」


と言って敵前逃亡を図る者まで出る始末に戦場は大混乱に陥った。




「こんな・・・こんな筈では・・・」


私が最後に見たのは蹂躙される国と、親友の“何で?”と言った絶望の顔であった・・・自分は、勇者ではなかったのか!?


あちこちから上がる悲鳴に、最期に思い浮かんだのは妻の顔であったが・・・敢え無く男も魔物の群れに呑まれて消えた。






〜勇者プレイヤーサイドその③〜



召喚された勇者の中には“勇者”と呼ばれるのに相応しい程の強者も少なからず居た。


所謂廃人と呼ばれるプレイヤーで、ゲームを遊び尽くした者が辿り着いた頂き中のさらに一握りのトッププレイヤー達だ。


ストラード国に招かれた彼もその1人で、他の国の訃報を聞いて多少不安視されていたものの、某小説の主人公達の様にたった1人で目前まで迫った魔物の大群を腕の一振りで塵も残さず壊滅させてしまった。


大半の者が


「流石勇者様っ!」


「勇者様万歳っ!!」


と叫び、喜んだが、極大魔法一撃で文字通り“塵も残さず”片付けた為、例年出る筈だった魔物からの素材が一切手に入らず、それを不満に思う声も一部出たと言うから人の欲とは郷が深い、と言わざるを得ない。


「ふむ・・・不穏だな」


そんな裏を嗅ぎとって、其の後ひっそりと国から出る強者も居たが、強者故にそのまま国に残る決断をした者も居た。




———・・・正に、彼らこそが俺TUEEEE系の主人公と言われる人物であったのだろう。






〜某勇者召喚国サイド〜


「な、な、なっ・・・」


勢いの止まらない魔物の群れに、門を破壊し傾れ込む黒い波に・・・勇者様さえ居れば、今後はもう安泰だと安易に考え過ぎていたのだと、この時になって漸く気付かされた。


———・・・いや、実はその兆候はあったのだ。


部下からの定期的報告では勇者様の進捗具合を見ていて本当に俺らよりも遥かに強いのか?と疑問視する声も少なくなかったのだから。


それらは実際に彼らを見て出た貴重な現地の声であったのに、自分は聞こえの良く無い現状に只々耳を塞いだだけだったのでは無いだろうか・・・。



今までのスタンピードでは、事前に入念な準備を怠らなかったのに。


国を囲む分厚い防波堤の外にこれでもかと罠を仕掛け、各国に応援を要請し、前線にはザカール国の戦士達が控え、少し間を開けた所に次いで各国の精鋭が、冒険者達が命を賭して戦ってくれていた。


兵士は最後の砦だ。


防波堤周りに配置させ、砦の上から、あるいは入り口近くで最後の殿を見事に務めて国を守ってくれていたのだ。


それを全て勇者に任せて特に準備などしなかった我らが悪かったのであろうか・・・。


古い文献を見つけて、物語の勇者と混合して考えてしまったのは果たして悪なのか。


・・・勇者召喚で現れたからそうだと思い込んで疑問にも思わなかったが、本当に彼らは勇者であったのだろうか・・・そんな問答は今はもう目下に迫った魔物達には関係無かった。




あの国に皆が嫉妬していた。


誰もが羨むような美しい顔(かんばせ)に、惚れ惚れする強さ。


あの国に結婚の打診を出す者は多かったが全員が振られ、“折角我らから声を掛けてやったのに”と妬むを繰り返した歴史を繰り返した。


近年では彼らを敢えて蛮族と蔑み、それでも飄々とする彼らへ私達は一矢報いたかっただけだったのかもしれない。


・・・信頼で成り立っていた褒賞を無理矢理変更し意趣返しをするに至ったのは・・・。


その結果の慣れ果てが今のこの状況であるならば、もう因果応報にも程があるな。


今にして思えば、なんとも稚拙で幼稚な愚策であったのかと自分や周りの馬鹿さ加減に反吐が出る思いだが、彼の国とはもう決裂してしまったのだ。


昔の先祖達が築いた信頼を、子供のような思惑で自ら手放してしまった・・・勇者なんて異世界人なんかに頼らなければ良かった・・・所詮伝説は伝説、作り話や夢物語のフィクションだったのだ。



絶望の中散った彼は、最後まで傲慢で身勝手であった。


勇者召喚は只の別世界からの集団誘拐であるし、彼らが命を懸けて戦う理由がそもそも無かった事にも気付けぬまま、国は滅ぶ事になる。


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