第11話 生還
〈カードを入手しました。〉
〈指名手配犯を倒し、褒賞を得ました。〉
〈プレイヤーのレベルが上がりました。〉
〈カードのレベルが上がりました。〉
〈新しいアーツが解放されました。〉
〈Mission clear!!2つのミッションを新たにクリアしました〉
〈カードを入手しました。〉
「・・・なんかすごい事になってんなぁ」
大量のインフォメーションに頭がパンクしそうになりながら、俺はとりあえずスマホで、今回の結果を確認する。
バカみたいな量のモンスターと、それなりのレベルだったPKを倒した事により、経験値とドロップが一気に俺の元にも雪崩れ込んできていた。見た感じ、経験値は、途中参加と撃破数の少なさ故にそれほど多くはないようだったが、ドロップはしっかり分配されているようで、空きだらけだったボックスがほとんど満杯なっていた。
しかも、どうもPKを倒した事で『賞金』を貰えたようで、12万ほどのF(フォイルと読むらしい)が所持金に加算されている。
また、この戦いでスタートアップミッションを2つクリアしていた。
クリアしたのは『プレイヤーレベルを10にしよう』と『50匹のモンスターを倒そう』の2つ。
これで【ミッション報酬】は残り4つ。
ぐっちゃぐちゃになったボックスの中身は、ゴブリンが落とした『石斧』や『錆びた短剣』。ビックラットが落とした『灰鼠の毛皮』と『長い前歯』。スケルトンが落とした『白い骨』と『錆びた剣』。ストーンリザードの『石の鱗皮』と『石の鉤爪』。そして最後に、キバコウモリの『黒い皮膜』『鋭い牙』だ。
ぶっちゃけ、武器以外は何に使えるのかは、一切不明。ただ、どれも素材アイテムなのは間違いなさそうなので、もしかしたら【鍛治士】で使えるものもあるかもしれない。
だが、この辺はまあ、正直、どうでもいい。
重要なのはこの先だ。すなわち、レベルアップしたステータスである。
ステータス
名前;ユーフラット
性別;男性
レベル;12
HP;85/1000 MP;28/30 SP;7/62
職業;【侍LV11】【鍛治士LV1】
称号;【ルーキー】
ジューカー;【カース・オブ・ブラック】
装備;【数打ちの刀】【粗末な革の胸当て】【粗末な革籠手】【革のブーツ】【ピッケル(大)】【カンテラ】
スキル;【剣術LV12】【生産の基本LV1】【クリティカルLV12】【発見LV9】【採掘LV7】
ショートカット;【初心者ポーション】【バインダー(採掘用)】
おお!これは、すごい!
プレイヤーレベルが12。さらに【侍】はLV11。【剣術】と【クリティカル】に至ってはLV12になっている。あと、地味に【発見】もレベルが1つ上がってんな。
まあ、あれだけのモンスターを倒して回ればこうもなろう。正直、【発見】が上がったのは、よく分からないが、まあ、上がっているなら文句はなかった。
割と危機一髪な状況ではあったが、なんだかんだ上手くいった感じだな。
こういうのが、情けは人の為ならず、って奴なんだろう、多分。
そんな事を思いながら、早速、グチャグチャになったボックスにソートをかけて整理しようとしていると、いつの間にか5人がこちらへ近づいて来ていた。その中の1人の女性プレイヤーが、笑顔でこちらへ声をかけてくる。
「お~い」
青を基調としたワンピースタイプのドレスと帽子が目を引く水色の髪をボブカットにした女性だ。
間延びした口調とは裏腹に、戦闘中は、割とセカセカした雰囲気で動き回っており、なんか小動物的な印象だった。
まあ、それはともかく、そんな女性プレイヤーは俺へと歩み寄って不意に声を上げた。
「お疲れ~・・・って、ちょっと、君、大丈夫~?!」
「え?・・・何が?」
「何がって、HPだよ~。君、もうバーが真っ赤じゃん!」
「・・・あ、そういえば」
よく見たら、残りHPは85。完全に瀕死である。まあ、敵集団のど真ん中に強引に突っ込んだりしてたからな。
流石に直撃は喰らわなかったとはいえ、細かいダメージが積もり積もって、俺のHPは残り1割を切っていた。
そんな俺の状態をしげしげと確認して、ワンピースの女性は呆れたように嘆息する。
「HP残り85・・・こんなの回復しなきゃダメじゃない!」
そう言って彼女は、どこからか取り出した薬瓶の中身を、パシャリと俺へ振り掛けた。
瞬間、俺のHPが一気に全快する。俺は、その回復量に思わず目を見張った。
なんだ、このポーション?!【ルーキー】限定の効果を持つ『初心者用ポーション』より効果が高い?!
「よしよし。ポロリとか、状態異常とかはないよね?うん、良かった、良かった」
「あ、ありがとう」
「それはこっちの台詞だよ~。私達、あのままじゃ絶対死んでたし~!・・・ね?」
「・・・まあ、そうね」
なんとも言えない面持ちで、金髪の女性プレイヤーが答えた。そしてその答えに被せるように、隣に立つローブの男性プレイヤーも同意する。
「ホント、護衛役の面目丸潰れだよねー。もう笑うしかないよ、あはははは!」
「・・・アラン、煩い」
なんとも愉快そうに1人笑うローブの男性プレイヤーに、小柄な黒髪の女性プレイヤーがツッコミを入れた。
こちらは、パッと見、ドリマの年齢制限をクリアしているのか不安になる見た目だが、身長はキャラクリエイトで弄る事をが出来るので、見た目通りの年齢とは限らないのが、VRゲームだ。
相手が女性ばっかな事もあり、迂闊な事を言わないように、内心、気を引き締める。
そして、そんな俺を安心させるように、最後の1人、マントを羽織った男性プレイヤーが前へ歩み出てきた。
「すまねえ、色々助けられちまったな!俺は、バック!・・・んで、こっちの2人が、火乃香とルルだ!」
「どうも~ルルで~っす!」
「・・・火乃香。ヨロ」
「お、おう」
水色の髪をしたワンピースの女性プレイヤーが、ルルさん。
オーバーオールを着た黒髪をポニーテールに結い上げたハンマー使いの女の子っぽい娘が、火乃香さん。
「俺らは、生産者クラン『ジョーカーマーケット』のメンバーだ!そんで、そっちの2人が・・・」
「クラン『デンドロビューム』の第3席、アランだよー」
「同じく『デンドロビューム』5席のミーティよ」
クラン・・・?
確か、ゲーム内でプレイヤーが同好の士で作るクラブチームみたいな奴だよな?
そんで、バックさん、ルルさん、火乃香さんが所属するクランが『ジョーカーマーケット』。
アランさんとミーティさんが所属するのが、『デンドロビューム』か。
うーん、ぶっちゃけ、まだEOJを始めたばっかだから、クラン名を聞いても、全く分からんな。有名クランなのか、それさえ分かんねえや。
とりあえず、俺は全員に頭を一度下げてから、改めて自分も名乗る事にする。
「えっと、俺はユーフラット。よろしく」
「ユーフラット、やっぱ聞かねえ名前だな。それにその反応と装備にレベル、やっぱマジで初心者なんだな?」
「?・・・ええ、まあ。妹に言われて今朝始めたばっかで」
「「「「「今朝ァ?!」」」」」
「?!」
俺が適当に答えると、5人が一斉に声を上げた。
いや、そんな驚かなんでも。
「今朝ってお前、なんで今朝はじめた奴が、『暗闇の窟』をうろついてんだよ?!」
『暗闇の窟』とは、今、俺達がいるダンジョンの名前だ。そういやそんな名前だった。
「なんでって・・・ファースとセカロンを素通りしたんで」
「いや、そもそも~どうやってハードオックスを?アレ、パスするのは、普通、無理だと思うんだけど~?」
「いや、普通に自分で倒しましたよ。妹がバフだけかけてくれたんで」
「バフだけ?!その妹さんが倒したんじゃなく?!」
「?・・・ええ」
「そんな!洞窟の前でアナタと会ったのお昼頃よ!?はじめて数時間であそこに居たなんて!冗談でしょ!?」
よっぽど信じられないのだろう。ミーティさんは、目を釣り上げて俺へ詰め寄ってくる。
いやでも、嘘じゃねえし。
「そもそもアナタ、生産プレイヤーって自分で言ってたじゃない!?アレは?まさか嘘だったの!?」
「いや、嘘じゃねえから。ちゃんと【鍛治士】だって。【侍】と二足ワラジなだけで」
「【侍】!?刀なんて使ってるから、まさかとは思ったけど!アンタ一体どうなって・・・痛ッ!?」
「・・・ミーティ煩い」
不意に、エキサイトしているミーティさんの頭にハンマーが落ちた。
犯人はもちろんハンマー使いの少女、火乃香さん。
「・・・ユーフラットはここに居る。それに強いのもさっき見た」
システム的にハードオックスを倒さずにここへ来る事は出来ないのだし、それが可能なのはさっきの戦いを見れば明白だ。と、火乃香さんは続ける。
「・・・しかもユーフラットは恩人」
そんな相手に突っかかるようなマネをするなと、火乃香さんはミーティさんを嗜めた。
そんな火乃香さんの言葉に顔を見合わせ、バックさん達は意見を交わす。
「う~ん・・・まあ、確かに、アレだけ強かったら~、ハードオックスくらい、別におかしくないかも~?」
「確かに。ちゃんとサポートがいりゃぁ、絶対勝てないって事はねえだろ」
「所詮は初期ボスだからね。僕の知り合いにも初日突破してる人も何人かいたと思う」
流石に多くはないみたいだが、決して不可能な事じゃないんだな、やっぱ。
そういう訳で、アランさんはミーティさんの肩をポンと叩いた。
「という訳でミーティ、いくら驚いたからって、あんな風に詰め寄るのは、良くないよ?」
「うぐぐ・・・ごめんなさい」
叩かれた痛みと冷ややかなアランさんの声に不服そうに頭を下げるミーティさん。
なんだろう、そこはかとなく残念感が漂うな、この人。
そしてそんな彼女を他所に、火乃香さんは話を続けた。
「・・・それに【侍】と【鍛治士】のコンボは、別におかしくない。むしろ【鍛治士】なら誰でも一度は考える」
「へえ、そうなのかい?」
「・・・どっちもSTRとDEXが上がる」
「「「なるほど(~)」」」
「いや、なんでお前まで納得してんだよ?」
火乃香さんの端的な説明に、アランさん、ルルさん、そして俺は、一斉に得心する。
バックさんのツッコミは無視だ。実際、アヤの薦められるままに決めただけだから、俺も知らねえのだ。
しかし、コレでアヤの意図が理解出来たな。
火乃香さんの言うSTRとDEXというのは、ゲーム用語の一つでステータス補正値のカテゴリーの一種だ。
STRは物理攻撃力。DEXは器用度を意味し、攻撃力と精密操作性が求められる【鍛治士】にも【侍】にも重要なステータスだ。
「・・・ユーフラットのデッキは多分、【剣術】【鍛治術】【生産の基本】【採掘】【発見】【クリティカル】。それでSTRとDEXを伸ばして、【侍】と【鍛治士】を両立するのは、ステータス的に見れば悪くない」
「お、おう」
サラッと俺のデッキ構成見透かされてんな。まあ、まだ【鍛治術】は持ってねえが。
「なんというか、火乃香さんは鋭いな」
「・・・火乃香で良い。βからの【鍛治士】なら誰でも分かる」
「おお、βテスター!」
火乃香はEOJのテストプレイに参加してたんだな。そして、口ぶりから察するに【鍛治士】なら別に珍しい組み合わせじゃないと。
しかし、火乃香は苦々しい顔で首を横へ振った。
「・・・いや、多分もう誰もやってない」
「え?なんで?」
「そりゃそうよ。アシストが役に立たないジョブなんて、普通、誰もやらないわ」
「あ・・・あ~」
復活してきたミーティさんの言葉に、俺は全てを悟った。
まあ、そりゃそうだ。
【侍】は、パリィやカウンター前提の軽量タンク的な性質の職業なのに、その肝心のパリィやカウンターが、全部プレイヤーの技量頼みだからな。
いくらVRで実際に剣術を使える必要はないとはいえ、『どう動かせば良いか』を判断、実行出来なきゃアバターは動かないのだ。
そしてパリィやカウンターは、相手の攻撃に合わせる分、その操作が特にシビア。
その辺の所をどうするか、どれだけ早く精密に動かせるかが、いわゆるプレイヤースキルになってくるのだが、それが『出来る』前提のスタイルは、なかなかにハードルが高い。どうしても、それなりの素養や訓練が必須になる。
しかし、そんな事をするくらいなら、普通は別の職業を選ぶ。剣を振るだけなら、他に4つも選択肢があるのだから。
そしてその予想を裏付けるように、他の3人も口々に言った。
「刀を使ってる【剣士】や【アサシン】は、結構いるけどな」
「私、【侍】やってる人、はじめて見たよ~」
「そりゃ、普通はあんなの無理って、すぐ諦めるもの」
「正直、一部の変態って呼ばれてる人しかやってない奴だからね」
「マジか・・・」
つまり、いわゆる地雷ビルドって事じゃねえか。
良くもまあ、そんなモン、しれっと俺に薦めやがるな、アイツ。
いや、普通に俺にとっては問題ないどころか、使いやすいんだけども!
「・・・まあ、良いか。アイツに丸投げした俺が悪いって言われれば、それまでだし」
「・・・自分で決めたんじゃないの?」
「妹に薦められてな」
「はあ?・・・なにそれ?!自分がゲームに誘っておいて、地雷構成を薦めるなんて、その妹さん、どういう神経してるの?」
不思議がる火乃香に俺が答えると、ミーティさんが顔を顰めた。
まあ、ミーティさんは初心者に親切なプレイヤーだからな。そう思ってしまうのは、無理もない。
「いやまあ、アイツは、俺なら大丈夫だって分かってるから」
「それにしたって、ありえないでしょ!」
いや、まあ確かになんの説明もなくはちょっとって俺も思うけどな。
ただ、アイツは、俺なら問題ないって分かってるし、実際、俺も使いやすいって思ってるのだ。
責めるに責められん。
「・・・そう。それが不思議」
「ん?」
「・・・ユーフラットは普通に戦えてた。なんで?」
火乃香の問いかけに、他の4人も一斉に俺を見る。
まあ、確かに気になるよな。
普通の人は、刀を振る以前に、握った事さえないのだ。それでシステムのアシスト無しに、クリティカルやパリィを決めろと言われても、出来る訳がない。
しかし、俺はそれが出来る。なぜなら、それをする機会が過去にあったからだ。
「あー、それは『成暴』のおかげだな」
「・・・セイボウ?」
「『成敗!暴れ大将軍』っていう初期のV・ワのゲームなんだけどな。刀1本で敵を斬りまくるゲームなんだよ」
内容的には、正義の将軍様が悪の組織のアジトに乗り込んで、1人で全員を切り捨て御免にするって感じのゲームだ。
時代劇風のタワーオフェンス系アクションゲームとでも言えばいいか?
普通に面白いゲームなのだが、とんでもない落とし穴のある問題作で、それがモーションアシストの出来があまりにお粗末で、まともに戦えないというものだった。
「は?・・・なにそれ?」
「何って言われても、そういうゲームなんだよ」
なにせ、プレイヤー全体の共通認識が『勝ちたかったら、刀の扱いは実戦で覚えろ』だったからな。そこをクリアしないと、チュートリアルくらいしか、まともにクリア出来ない。
「・・・クソゲー」
「まあな~」
そこはやり込んでた俺でも、否定出来ない。
ただ、それ以外の部分は、難易度も易しい~超高難易度までしっかりフォローされていて、操作さえなんとか出来れば、メチャクチャ面白いゲームでもあった。
それに難しい事は悪い事ばかりでもない。なんせ俺は、あのゲームをやって以降の剣を振る系のVRゲームで一切困らなくなった。
「『成暴』に比べたら、これくらい軽い、軽い」
そう言って他のゲームを剣一本で渡り歩くのが、マジモンの『成暴ユーザー』、通称『将軍様』なのだ。
そんな俺の説明に、一同がなんとも言えない顔で顔を見合わせる。普通にドン引きだ。
「なんならやってみると良いぞ。剣を振るのがメチャクチャ楽になるから」
「・・・クソゲーはノーサンキュ」
「えー・・・慣れたら面白いのに」
「・・・イヤ。昔、バグだらけのVRやって懲りたから」
「バグ?何やってたん・・・」
「ねぇ~、色々気になるのは分かるけど、そろそろ移動しよ~?私、もう疲れたよ~」
おっと、いけねえ。
ついついクソゲー談義を始めそうになっちまった!
ここはまだ暗いダンジョンの中。出口もそんな遠くないし、さっさと出るに限る。
という訳で、俺達は足早に移動を開始。そして数分で出口のポータルのある安全地帯へと辿り着いた。
「ふは~、到~着~!・・・一時はどうなる事かと思ったよ~」
「そうね。まさかMPKにハメられるなんて思ってもみなかった」
「そうだねー。ユーフラット君様サマだ」
「・・・アリ」
「ホント、助かったぜ!」
「ははは、いやいや」
皆、口々に改めて礼を言ってくる。そんな言葉がちょっとくすぐったい。
とは言え、お礼の類はもう十分貰ったし、賞金やらドロップやら経験値やらもたんまりだ。
俺も十分得してるので、気にしないで欲しい。
「とりあえず、無事で良かったよ。・・・じゃあ、俺はこの辺で」
流石に俺も疲れたし、夕飯の支度やらもしなくちゃならない。俺は挨拶もそこそこにログアウトしようとメニューを開いた。
すると、慌てて声があがった。
「は?いや、ちょっと待ちなさい!」
「待て待て待て!」
「ん?」
「まだ、分け前の話が終わってねえだろ!」
「分け前?」
いや、さっき賞金もドロップも、メンバー一律に出てたんじゃねえのか?
まさか、ほとんどトドメを刺せなかった俺が、ドロップや賞金が多い訳ねえし。
「ちげえよ!PKのドロップがあんだろーが!」
「このまま何も持たせずに帰せる訳がないでしょう!どれだけ恩があると思ってるの!?」
「うへ?」
猛然と声を上げる2人に、俺は思わず面食らった。
詳しく聞いてみると、さっき倒したPKは、その場にカードを4枚落としていったらしい。
プレイヤーが、死亡時にショートカットのカードを落とすのは、PKも同じだ。
それをバックさん達は回収しておいてくれたらしい。
「それにアレだけドロップがあったなら、いる、いらないを見てトレードした方がいいよ?」
「私達、生産プレイヤーだから、買取も出来るしね~」
「・・・おお!」
そりゃありがたい。ぶっちゃけ、素材に関しては、全く分かってなかったんだ。整理を手伝って貰えるなら、非常に助かる。
という訳で、俺はボックスを開いてドロップを見て貰う。
「・・・【鍛治士】なら『錆びた武器シリーズ』は全部確保。鋳潰せばインゴットになる」
「何?マジか」
「・・・マジ。あと『錆びた武器シリーズ』は、修理すれば掘り出し物になる事がある」
「ほう?」
火乃香によると、基本はインゴット作りの練習素材なのだが、たまに高性能な武器に修理出来る物があるらしい。
「・・・これだけあれば、一本くらいあるかも?」
「ガチャ的な感じか」
「・・・そう。だから交換。アタシは前歯と爪を貰う」
「じゃあ、私のもあげる~。代わりに『白い骨』は私にちょうだ~い」
「私も上げるわ。代わりはその『石斧』かしらね。流石にそれは使わないでしょ?」
「残りの毛皮と皮膜と牙は、いらなきゃ俺が買い取るぜ。クラマスが使うから、いくらあっても困らねえ!」
「この『石の鱗皮』はどうする?」
「俺が引き取っても構わねえが・・・それは残しとけ。防具になるぞ」
そんなこんなで、俺の手元にあった大量の素材は、その大半が『錆びた剣』と『錆びた短剣』になった。『石の鱗皮』4つは、手元に残し、後は、全部トレードと売却だ。
「よし、こんなもんだな?」
「そうね。良いと思う」
俺を含め、全員で不要なものをトレードし終え、満足そうに微笑む火乃香、ルルさん、ミーティさんの三人。
【鍛治士】の火乃香は、【細工】に使える『長い前歯』と『石の鉤爪』。【錬金術師】のルルさんは、『白い骨』。ミーティさんも『石斧』を山ほど手に入れてご満悦だ。
「交換しといてアレだけど、良かったのか?こんなに譲って貰っちゃって?」
「・・・問題ない。アタシも【鍛治士】だけど、練習台はもういらない」
「この骨はね~、肥料に調合して友達の【ファーマー】に売れるんだ~」
「良いのよ。石斧は、投擲アイテムだから、あっても全然困らないの」
「僕はバックに無駄なく全部買い取って貰えたからオッケーさ」
「素材は、クラマスが使えば、儲けになる。ありがとよ!」
どうやら、初心者の俺に気を遣ってくれた訳でもなく、普通に利害は一致したらしい。
俺も自分の刀を作る為、インゴットはいくらあっても良いからな。レベル上げにもなるし、地味に美味しい交換だった。
「さて、じゃあ最後のお楽しみだな。あのPK野郎が落としていったカードだ」
そう言って、バックさんが4枚のカードを出した。
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