第13話 七歳の分かれ道

月島くんはゆっくりと、頷いた。


「僕は母さんが再婚して“月島”になった。月島になるまでは、“日高 陽”だった。」


本当に、彼がこの世界の“私”なんだ。


私はまだ信じられずにいた。


「正直、まだ信じられてない。でも、ただの同名ってわけでもない。不思議な気持ちだよ。」


月島くんも同じように混乱しているようだ。


頭をかいたり、部屋の中をウロウロしたりしている。


コンコンコン


二人で挙動不審になっていると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。


「陽、お茶でいい?お菓子はいる?」


ドアを控えめに開けて、顔を覗かせたお母さんが、そう声をかけてきた。


「あ、うん。なんでも。」


月島くんはそう答えて、やっと座った。


「ごゆっくり」


お母さんは私の方を見て、にっこりしながらそう言った。


お母さんとのやり取りでなぜか、ちょっと落ち着き、私たちは座って話し始めた。


「お母さん、変わらないね。七年前のまま。」


私はなぜか浮かんでくる涙をこらえた。


「えっと、七年前両親が離婚するのは一緒で、僕は母親、日高さんは父親に引き取られたってところが違うのか。」


「うん。それから、私の学校にはまだ美術部があって、私は美術部員。でも、月島くんの学校には美術部は無いんだよね。?」


「あぁ、無い。あと、日高さん「地震でびっくりして」とか言ってなかった?」


「言ったよ。下校時間じゃないのにチャイムがなって、おかしいなと思ったら地震が来て、しゃがみこんでたらこっちに来てたの。」


どうやってこの世界へ来たのか、改めて口に出すと、理不尽なことばかりだ。


「そのチャイム、多分こっちの世界の授業が終わるチャイムだよ。美術室に行く前にちょうど鳴ってたから。」


「じゃあ、あのチャイムが聴こえた時にはもう、こっちに入りかけてたってことか。」


私たちは答え合わせをするように、話をつなぎ始めた。


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