第11話 出会う

「これから僕の母を紹介する。僕の予想が正しければ、たぶん日高さんは驚くと思う。何も言わなくていいから、話し合わせてくれる?」


不安と混乱で考えられない私も、流石に驚く。


「母を紹介って⁉」


出会ったばっかりなのに家族に紹介なんて。


私はあたふたしてしまう。


「大丈夫。会えばわかるよ。」


私とは正反対に冷静な月島くん。


私が心の準備をする時間はないまま、月島くんは住宅街に並ぶ家の一つに向かって歩き出だした。


そのままなんの合図もなく、ポケットから鍵を取り出して家のドアを開けた。


「ただいま、母さん。ちょっと紹介したい人がいるんだけど。」


と大声でお母さんを呼んでいる。


「なぁーにー?」


家の中から聞こえる優しそうな声が聞こえてくる。


その声を私の心は知っている気がした。


玄関まで出てきた月島くんのお母さんは、おっとりした顔で優しそうで、いかにも”お母さん”といった感じだった。


月島くんのお母さんは私を見つけるなり、


「あらまぁ!どうしたのかわいい子。もしかして彼女さん⁉」


とウキウキしている。


私は「違います」と否定するべきだが、言葉が出てこなかった。


ただ目を見開いて、月島くんのお母さんを見つめた。


私の様子から察してくれた月島くんは、「友達なんだけど、家あげてもいい?」とお母さんに許可を取る。


月島くんのお母さんは「もちろん。どうぞ~。」と、快く迎えてくれた。


私は「お邪魔します。」を何とか口に出して、月島くんの家にお邪魔した。


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