第10話 出会う

月島くんは数秒黙ると、馬鹿にするわけでも、困るわけでもなく、真剣な面持ちで私に、言った。


「日高さん、確かめたいことがあるので付いて来てくれませんか?」


その時、会って間もないのに、なぜか月島くんの声に安心感を感じた。


私は頷き、月島くんと学校を出た。


校門を出ても、季節が九月であること以外は何も変わらない風景だ。


「何かと違うところがあったら教えてください。」


月島くんは冷静に、そう言いながらゆっくりと歩いた。


私はあたりを見渡しながら、月島くんの後ろをまるで、母親を追いかける子供のようについて歩いた。


「あれ?あんなところにコンビニなかったと思う。」


私は足を止めて、交差点の角を指さした。


「なるほど。」


月島くんは頷きながら、歩き進める。


不安で押しつぶされそうになりながらも私は、いつもと違うところを指さしで月島くんに報告した。


歩きながら、今更ながら月島くんのことをいい人過ぎないかと思い始めた。


見ず知らずの女にここまでしてくれるなんて、しかも、「タイムスリップしてきたかも」なんてバカみたいなこと言う女なのに。


不安要素を自分で増やしていると月島くんが止まった。


私はあたりを見渡したが何の変哲もない住宅街だ。


月島くんは私に向かって振り返り、話し始めた。


「日高さん、こんなことを聞くのはどうかと思うんだけど、日高さんの両親は家にいる?」


月島くんは突然敬語を止め、話し方が変わった。

でも、私は何も考えずに答えた。

何も考えられなかったし、今は聞かれたらなんでも答えてしまうと思う。


「両親は昔離婚していて、仕事が終わっていれば父と再婚相手と弟が家にいる。」


私の答えに月島くんは頷いた。


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