第9話 出会う

すると、今度は月島くんが驚いた顔をした。


「あの、日高さんの下の名前って教えてもらえませんか?できれば漢字も。」


月島くんは恐る恐る聞いてきた。


自分は下の名前名乗らなかったのに?と若干引っかかったが、減るものでもないので答えた。


ようだよ。“日高”は日光の”日”に、高い低いの“高”い。陽は太陽の“陽”。」


私が答えると、「偶然か」とブツブツ言い出した月島くん。


何か変?と聞こうとしたその時だった。


「えっ!?」


私は思わず大声を上げた。


「わっ」


私の声に月島くんが驚く。


「どうしましたか?」


月島くんの問いに私は問で返してしまった。

だって、美術室の部屋から見える校庭の木々が青々としていたから。

そんなはずはない、十二月だし、さっきまで落ち葉が落ち切って枝だけになっていた。


「今日って、?」


「今日は、九月三日です。」


私はもうどうすればいいのかわからなかった。


私は間違いなく、この学校の生徒で、二年一組で、十二月の美術室にいた。


なのにここは、九月で、美術部はなくて、でも同じ高校。


あり得ないことで、信じられないし、妄想のし過ぎで頭がおかしくなったんだとも思うけれど、これはいわゆる「タイムスリップ」というものではないだろうか。


「…月島くん、私今から変なこと言うけど、私もしかしたら”タイムスリップ”してきたのかもしれない。」


私は混乱しながら、さっき知り合ったばかりの月島くんにそう言っていた。


もし本当にタイムスリップだとしたら、今相談できるのはこの月島くんしかいない。


自分でもばかげているとわかりながら、月島くんに意見を求めた。




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