第7話 出会う

どのぐらいたっただろう。


たぶん、ほんの数秒の出来事だったように思う。


ガラガラ


誰かが美術室のドアを開けた音に安堵し、私は顔を上げた。


「モモ、優介!?」


あれだけ揺れたんだから、絶対二人のどちらかが駆けつけてくれたのだと思いこんでいた。


しかし、美術室のドアを開けたのは見知らぬ男子だった。


「…大丈夫ですか?」


見知らぬ男子は気まずそうに、私に声をかけた。


私は恥ずかしくなり、「大丈夫です」と、その男子のほうを見ないように立ち上がった。


三秒ほどの沈黙の後、私はようやく落ち着きを取り戻してきた。


「あの…美術室に何か用ですか?」


そう、見知らぬ男子はあたり前のように美術室に入り、絵を描く準備をしようとしていたが、それはおかしい。


だってここは美術室で、美術部員にこんな人はいないのだから。


「えっと…ここで絵を描いているんです」


見知らぬ男子は私と目を合わせることなくそう言った。


私は思わず、「は?」と顔をしかめてしまった。


「なんで噓つくんですか?」


「…噓じゃないです。」


見知らぬ男子は私におびえているのか、小さな声で言い返してくる。


「私、美術部員で毎日ここに来ているけど、あなたに合うのは初めてですよ?」


私の言葉に、今度は見知らぬ男子が顔をしかめた。


「あの…、僕は毎日ではないけど、二年前から度々ここに来てます。それにですよね?」


見知らぬ男子の言葉に、ふざけてるのかと言い返そうとしたが、私は踏みとどまった。

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