第6話 出会う
真っ白だったキャンバスに、薄っすら二人の影が出来上がる。
自分で描いたくせに、そのキャンバスの中に自分がいないことがちょっぴりさみしく感じた。
でも、自分を描こうとは思えない。
私はまた、薄く描いた下書きを消し始める。
この一週間これを何度も繰り返している。
自分の見ている世界が小さくて、自分の中の引き出せる引き出しが少なすぎることを実感させられる。
「私なんて消えちゃえばいいのに」
何の前触れもなく、感傷的な気持ちなわけでもなく、ただ口から出たひとり言。
私にとっては、「おなかすいた」とか「眠たい」とかと同じ、口癖のようなひとり言。
キャンバスをぼーっと眺めてると、私の耳に突然音が鳴り響いた。
キーンコーンカーンコーン…
チャイムがなり始めたのだ。
「あれ?もうそんな時間?」
私ははっとして、あたりを見渡した。
下書きを描いてはいたが、下校時間のチャイムが鳴るまで没頭していた感覚はない。
そもそも、掃除当番で遅れてくるはずのモモと優介がまだ来てない。
「どんなに遅くても、いつも15分もあれば掃除を終わらせて来るのに。」
私は不思議に思いながら、美術室を出て、モモと優介を探しに行こうとした。
美術室の建付けの悪い扉に手をかけたその時だった。
ガタガタガタガタガタガタガタガタ
私が美術室を出ようとした瞬間に、地面が音を立てて揺れ始めた。
「何⁉地震⁉」
私は一人で大きな声を出して、しゃがみこんだ。
両手で頭を抱えながら、うずくまる。
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