第5話 出会う
放課後、私は自分の日常を振り返っていた。
真っ白のままのキャンバスを見つめて。
モモと優介は掃除当番で遅れてくるらしい。
「私は何がしたいんだ」
この日は今朝の深夜妄想症候群をかなり引きずっているようだった。
美術室で一人、キャンバス見つめて、自分と向き合ってる。
それはもう、一人主人公ごっこのようだ。
自分の事はダメだ。
妙に恥ずかしくて、いたたまれない気持ちになる。
「モモを描いてみるか。」
頭の中でモモを思い浮かべる。
出会いは七歳の時。
当時からずっと変わらないボブヘアーで、雰囲気が優しいから大人しいと思われがちだが、割と活発で運動神経がいい。
本当は運動部の方が向いてるはずなのに、美術部に入ったのは、優介がいるからってこと私は知ってる。
本人はあんまり意識してないみたいだけど、モモが優介を見る目は恋する女の子って感じがする。
友達は多いのに、いつも私を優先してくれる優しい親友だ。
「モモを描くなら、優介も隣に描こうかな」
思いつきで、今度は優介のことを思い浮かべた。
優介との出会いも七歳、私が引越してきて、ご近所さんとして知り合った。
小学校は集団登下校だから、そのうちに仲良くなっていた。
私にとっては半分血の繋がった弟よりも、本当の弟って感じの存在。
私に対する口ぶりはまるで兄のようだけど、不器用な優しさを持ってるやつで、それが周りに伝わりずらいところに、私はついお節介を焼きたくなる。
友達はその性格ゆえに多くは無いが、優介の友達には良い奴が多い。
良い幼馴染だ。
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