第4話 私の話

夜は考えがネガティブになるし、非現実的な妄想にも拍車がかかってしまうから嫌いだ。


朝起きて、ベッドの上で昨日考えていたことを思い出して、馬鹿らしいし、恥ずかしくなる。


何度も同じことをしているので、私は勝手に"深夜妄想症候群しんやもうそうしょうこうぐん"と命名している。


今朝も、深夜妄想症候群に悩まされながら起き上がる。


ダラダラと準備をして、味わうこともなく簡単な朝食を胃に流し込む。


昨日の夕食のかぺかぺになったお皿を一緒に洗い、長い髪を後ろにまとめてくくる。


学校は嫌いじゃない。


勉強や体育は面倒くさいが、モモや優介がいて、クラスの雰囲気も悪くない。


何より、家にいる時間と比べたら楽しい時間だ。


無言で家を出て、数分歩けば優介の家が見える。


「はよ」


おはようの省略語で優介はいつも挨拶してくる。

約束しているわけではないが、大体同じ時間に家をでるので、優介の家の前あたりで挨拶して一緒に行くのが日課だ。


モモはバス通学なので校門前で合流する。


私たちの学校は一学年三クラスしかないのに、私が一組、モモが二組、優介が三組とみんなクラスが違う。

ある意味すごいと思っている。


「じゃあ、またお昼休みに」


私はいつも通り、自分のクラスの前で二人と分かれる。


授業は何となく聞いては、たまに窓の外を見るのが癖になっている。


昼は美術室で三人で食べて、放課後も美術室で三人で過ごす。


先輩たちは受験シーズンで部室にはもう来ない。


この学校はなぜか音楽に力を入れていて、選択科目のはずの音楽、書道、美術は強制的に音楽を必修させられる。

実質選択科目ではない。


だから、文化祭が終わった十月から、この美術室には私たち三人だけが出入りしている。


振り返ると、私の当たり前の日常には、モモと優介と美術室が含まれていた。




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