第2話 私の話

結局、今日も下書きのまま下校時間になり、私たちは家に帰る。


家に着くと、時間は19時を過ぎていた。


玄関を無言で通り過ぎる。


ここ十年はただいまもおかえりも、まともな挨拶を家でした記憶はない。


両親は共働きだが、別に家にいないわけじゃない。


ただ、仲が悪いのだ。


いや、仲が悪いとも言えないほどにお互いに無関心なんだ。


私が七歳の時、両親は離婚した。

理由はあまり覚えていないが裁判をして、私は父親に引き取られた。


父親は離婚して一年もたたないうちに年下の女と再婚した。


それから三年後には半分だけ血のつながった弟ができた。


男の子が欲しかった父親は大喜びし、義母は自分の子だけを愛でた。


私はこの中で上手く家族をやれる自信がなく、自ら空気を演じた。


喧嘩するわけでもなく、虐待されているわけでもない。


ただお互いが空気のように無視しているだけ。


誰も私に話しかけないし、私も家族に話しかけたりしない。


必要な用事があるときはメモを冷蔵庫に貼っておく。

すると、次の日必要なものが私の部屋の前に置かれている。


お風呂や食事は時間を決めてかぶらないようにしているし、トイレも私の部屋は二階にあるから二階のトイレに行くけど、家族は一階で寝るから一階のトイレを使う。


気分はいつも居候の気持ちで、正直私は家にいるのが好きじゃない。


最後に父親の言葉を聞いたのは、十二歳になった時。


「ますます絵里えりに似てきて、気持ち悪いよ。」


絵里は私の母親の名前。


仮にも、一度結婚した相手だというのに。

元嫁に似ていることが気に食わないなんて、馬鹿げた話だ。


私はこの時から父親が悪い意味で滑稽こっけいに思えて仕方がない。


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