第2話 もっともっと絶体絶命なのです

 二人の女……医療魔術師のカレンともう一人の金髪が蛇? 正体が大蛇だっていうの??


 うん。信じられない。

 でもさ、妖人族のジャンとアンナが植物化して弦を伸ばして、私達をがんじがらめに拘束しちゃったんだから、あの美女二人が蛇になったって別におかしくない……と思う。


「カレン、アレッタ。そのヤモリを始末しろ。ヤってる最中に火を吐かれちゃかなわんからな。それとデブ。炎の魔法で弦を焼き切っちまおうとか考えるなよ。この弦にも神経が通ってるんだ。切ったり焼いたりすると、本体が苦痛で泣き叫ぶぞ。くくく」


 ええっと! いざとなれば魔法で何とかしようと思っていたのだけど……人を傷つけたり苦痛を与えたりするのはダメだよね。


 炎の魔法は使えない。

 だったらどうしたらいい。


 私は隣で拘束されているウルファ姫をチラリと見たのだけど、俯いて目を閉じたまま黙っている。何か策があるんだろうか……いや、無いよね。多分、最後の手段は最後まで取っておくんだと思う。


 ふと気が付くと、私の目の前に金髪美女が立っていた。確かバズズリアがアレッタと呼んでいた女性だ。


「あなた。私好みよ」


 ニヤリと笑ったアレッタの口から二股に分かれた長い舌が伸びてきて、私の頬をベロリと舐めた。流石にこれは気味が悪い。背に一筋の冷や汗が流れてくる。


「ところで、あのトカゲは何処に隠したの? 胸の中かしら?」

「サンドラはヤモリなの。トカゲって言うと怒るよ」

「関係ないわね。どこに隠したの?」

「知らない。自由にさせてある」

「ふーん。じゃあ、あなたの制服を剥ぎ取って探させてもらうわ」


 えええ……制服を剥ぎ取るって……ヤバいじゃん。

 私、成人指定的な事をされちゃうんですか??


 アレッタの指の長い爪。赤く染まったその鋭い爪が私の着ているブレザーのボタンに触れた。その瞬間にポンとボタンが飛んで行った。


「ああ。いい張りだわね。ブラウスのボタンも飛ばしちゃうわ」


 アレッタの赤い爪は私のブラウスに触れた。彼女はボタンを一つづつ飛ばしてから、ブラウスを左右に開いた。下着に包まれた私の胸……多分、クラス一大きな私の胸が晒されてしまった。そしてアレッタはニヤニヤと笑いながら私の胸を撫で始めた。


「いいわ。大きさといい張りといい最高の胸、巨乳だわ。これ、思う存分味わいたい……」


 アレッタは赤くて先っぽが二つに割れている舌で私の胸を舐め始めた。しかし、いつの間にか起き上がっている赤鬼のブルーノがアレッタの肩を掴んだ。


「その巨乳は俺の物だ。俺が先に頂くんだよ」

「クソ鬼は黙って見てろよ。一人でシコってろ」

「何だと? このメス蛇が偉そうな事を言うな。てめえはお色気だけの爬虫類じゃねえか!」


 何と、ブルーノとアレッタが喧嘩し始めた。これはチャンスかも?? と思って姫の方を見たのだけど、姫は頬を赤らめて私の方をじぃーと見つめてたの……そんなに見られちゃ恥ずかしいよ……。


「おお、お前ら巨乳ちゃんの事はもういいのか? だったらコイツにヤらせるぞ。半分植物になってもちゃんと棒はあるからなあ。ひゃひゃひゃ」


 何と、黒竜のバズズリアは植物化してしゃがみこんでいたジャンを立たせて私の前に連れて来た。ジャンは全身から弦が伸びていて衣類はボロボロだった。むき出しの下半身はやっぱり……中学生の私にはとても説明できないんだけど、これはいわゆる貞操の危機ってやつに違いない。


 緑色になって全身から弦を伸ばしているジャンは私に抱き付いてグリグリと腰を擦りつけて来た。これ、物凄く気持ち悪いんですけど。


「気持ち悪いのか?」


 いきなり左肩にサンドラが現れた。


「うん……ってサンドラ。貴方どこにいたの?」

「お前のスカートの中」

「そんな所に隠れてたんだ」

「まあな。俺だって苦手なものはある」

「蛇女?」

「ああ、アレは気色悪いぜ」

「そうだね」

「ところでティナ。あの魔法を使えよ」

「あの魔法って?」

「凍らせる奴」

「あれ、上手に温度をコントロールできないんだ。どれだけの範囲が凍るのか、どのくらい凍るのかわかんない」

「わかってる。だから効くぞ。そんでもって、俺は逃げる」

「え? 逃げるの? 人でなしだね」

「俺は火竜の眷属。女の子だけど人間じゃねえから関係ないね。じゃあな」


 そしてさっさと消えてしまった。ま、火を吐く火竜サラマンダーの眷属とは言え、サンドラの小さな体では戦えないし氷の魔法にはめっぽう弱いのだ。


 そして私の目の前では、植物人間になったジャンが緑色の体液を私に擦り付けながら、触手のような弦を私に絡みつかせくねくねと腰を動かしている。気持ち悪い。もう嫌だ。これ以上の屈辱は御免こうむりたい。


「姫、やっちゃうよ」

「燃やすのか?」

「逆。全部凍らせる。だから、姫は適当なところで逃げて」


 蛇女のアレッタと赤鬼のブルーノは隅の方で小突き合っている。黒竜のバズズリアは、私に抱き付いて疑似セックスをしているジャンを蔑んだ目で眺めていた。


 私は息を大きく吸ってから吐いた。私の息を浴びた植物人間のジャンの動きが止まった。ジャンの緑色の皮膚を白い霜が覆っていく。そして倉庫の床にも白い霜が広がっていった。壁と天井も白く凍っていく。


「おい。デブ女。お前は何をしたんだ!」


 室温の急激な低下に驚いたのだろう。バズズリアは慌ててソファーから立ち上がったものの、奴の脚は凍りつき床から離れなくなっていた。




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