漆黒竜と黄金竜【後編】
暗黒星雲
第1話 これは絶体絶命かもしれません
私はティナ。ちょっとぽっちゃり系の女の子です。今、非常に不味い事になっているの。私とウルファ姫が何と! 植物人間が出した沢山の弦に絡まれて身動きが取れなくなっちゃったんだ。不味いよね。
どうしてこうなったのか??
簡単に言うと、医療魔術師のカレンに「寄生樹に憑りつかれた女の子を治療するため魔導書が必要だ」と言われたの。その魔導書は私達の通う聖ラグナリア学園の図書館で借りることができた。私達は寄生樹に憑りつかれたアンナのいる倉庫へと戻ったんだけど、医療魔術師のカレンは治療ではなくてアンナを植物化して操り、私達を沢山の弦で拘束したのです。
そして最悪なのが、この件を操っているのが暗黒竜のバズズリアだって事なの。奴は以前、姫と戦って敗れ皇都を追い出されたことがある。その仕返しがしたかったんじゃないかな。あのバズズリアからすれば、姫は天敵みたいだから。
「カレン、よくやった。こうも簡単に引っ掛かるとは思わなかったぞ」
「恐れ入ります。バズズリアさま」
「そうだな……先ず、服を引っぺがそうか。ブルーノ」
「はい」
「やれ」
赤鬼のブルーノ。コイツは以前からバズズリアの手先だった。今も従者のようにべったりくっ付いて悪さをしているのか。
赤鬼はニヤニヤと下卑た笑みを浮かべながらナイフを取り出した。そしてその刃を舌でしゃぶる。
「いいか? 切るのは服だけだぞ。弦は切るなよ。女も傷つけるな」
「ああ。服を剥いだらぽっちゃりの方は俺にくれるんだろ?」
「好きにしていい。だが、ウルファに手を出すなよ。アレは俺の獲物だ」
「わかってる。しかし、親分も物好きだねえ。ワイはロリじゃ勃たねえよ」
「くくく……お前にはわからんだろうが、高慢な女を支配する愉悦は体形とは別次元なんだよ」
「そうかい。じゃあ早速ひっぺがそうか」
「ゆっくりやれよ。楽しまねえとな」
赤鬼が私の頬をベロリと舐めた。本当に気持ち悪い。そして手に持っブたナイフをブレザーのボタンに当てたところで、緋色のヤモリが赤鬼の手に噛みついた。ガブリと。
「痛てえな。何で女の胸元からトカゲが出て来やがるんだ」
赤鬼は血だらけになった右手を左手で抑えているが、ナイフは握ったままだ。
「ふん。ティナの胸は俺の物だ。汚らわしい男の手で触るんじゃねえよ」
使い魔のサンドラだ。いいタイミングで出てきた彼女は素早く私の右肩に移動している。私の胸元に潜り込んでいたみたいだけど、全然気付かなかったよ。
「なんだと。このクソトカゲが」
赤鬼は血だらけの手で握ったナイフを突きつけてくるんだけど、サンドラは奴の顔にぷうっと火を吐いた。直径30センチくらいの火だけど、顔に直接吹きかけられたらたまんないよね。
赤鬼はナイフを床に投げ捨て、両手で顔を押さえてしゃがみこんでしまった。
「へへ。俺の火の玉はどうだい? 中々のもんだろ」
「ありがとね、サンドラ」
「どういたしまして。ところでティナ。夕食の幼虫、忘れてねえよな」
ヤバイ。サンドラにカイコの幼虫を買ってあげる約束をしていたの、すっかりと忘れていた。
「お……覚えてるわよ。でも、ここを乗り切らなきゃ買ってあげられないよ」
「そうだな。一つ忠告しておく。俺に期待をするな」
「え? 何で?」
「そこにいる女は二人とも大蛇だ。俺じゃあ歯が立たない」
「そうなの? 美女みたいだけど、蛇なの?」
「白蛇と赤黒まだらの蛇だ。俺は今、どうやってここから逃げ出すかを考えてる最中なんだ」
まあ、そうだろうね。火を吐くとはいうものの、小っちゃいヤモリと大蛇じゃあお話しにならないし、あの黒竜バズズリアだっている。
これは本当に絶体絶命ってやつだね。
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