第32話 画策
「今、ショコラと、クッキーがストレーク侯爵を追跡しているので、いずれ色々分って来ると思います。又分り次第連絡します。本日はありがとうございました。」
「何のこれしき、リズ、クレイ後を任せた。」
「「ハイ。」」
その後様子を見ていると、裏口を見張っていたクレイから、薬師の弟子は何処かに出かけるようだ、と念話が届いた。
クレイと合流し後を着けると、なんと、ケランド王弟殿下の王弟妃イヌエット様の弟レアーズ・バルロ公爵邸に入って行った。閉じられた門の外で、どう潜入するか思案していると、プリンが上空から公爵邸に侵入させてくれた。
そこで、バルバス卿を追って来たショコラと合流し、その後私はプリンに乗って上空から、クレイとショコラは隠密で邸内に侵入し密談を聴くことにした。
密談の内容は念話でショコラと従魔契約したみんなの耳に届いている。
レアーズ卿の話では、
「ケランド王弟殿下は自分がやった事の大きさにようやく気が付き、彼は、本当なら自分が愛する子どもまで処刑になっても文句は言えない。爵位を剥奪され、庶民堕ちでも軽い刑位なのに、王位継承権の剥奪のみで済ませてくれた国王陛下夫妻とフェアリズ王女殿下に今後は生涯忠誠を誓うと言い出し、妻のイヌエット妃には離婚を申し出て来たそうだ。」
「離婚ですか、穏やかではなくなったようですね。」
「姉のイヌエット妃が離婚されれば、王弟殿下の妃になった事で、このバルロ公爵家は子爵の位から公爵の位になっていた。姉上の策略の失敗で離婚されれば、姉上もただでは済まないだろうが、我々も貴族ではいられなくなる。姉上はやりすぎたんだ。」
「これから我々はどうなるんでしょうか?」
「分らん。だが姉上は国王様とリズ様の暗殺を計画し、ケランド王弟殿下を国王にし、ご自分が王妃になり自分の息子ベクトルを次期国王にすることを夢見てしまったのだ。それどころか、国民を餓死寸前まで追い詰めた税金で贅を尽くした私邸を二つも建てた。公開処刑されないのが不思議な位だ。」
「それならば、我々には、まだ温情を与える価値があると思っているのでしょう。」
「そうなのかも知れないな。リズ王女はご自分が殺されかけたにもかかわらず、発言権こそないが姉の立場を守ってくれたと言う。それなのに反省の色も見せず国王様とリズ様暗殺を、まだ画策をしようとしていたのだ。その事がケランド王弟殿下の耳に入り、今回の離婚の申し出に繋がった。これが真実のようだ。」
「イヌエット様も、もう少し大人しくしていれば良かったように思われますが。」
「そうだな、そうであれば良かったのだが、有ろう事か、姉上は離婚届にサインさせられる前に今回の暗殺の企てを知っている、ケランド王弟殿下と執事ベクターそれに、前王宮薬師と騎士団の牢屋の中に居る王都の薬師の暗殺を早急に終わらせないと、姉上もろとも我等も終わると言って来ている。」
「そうですね。そう成るでしょうね。」
「バルバス卿君達親子も今回の計画には首まで浸かっている事を忘れていないだろうね。本来は君達親子が暗殺に加わる予定で王宮薬師と王都の薬師の弟子となる事に私が尽力したからね。」
「はい おっしゃる通りご尽力頂きました。」
「タダ途中で作戦を変更し、彼等自信が毒殺や画策に加わるようにし、自滅するよう仕向けた、その後釜に座れるよう君達親子を私が推薦したからね。それも忘れてはいないだろうね。」
「はい覚えております。」
「最後に、ケランド王弟殿下を金貨一万枚で、執事ベクターと騎士団に捕まっている薬師と王都の薬師になった元薬師長を各金貨五百枚で早急に暗殺の依頼を裏社会の者に出した。此方の支払いは頼んでおくよ。」
「承知いたしました。」
やはり十年前からこの作戦は始まっていたようだ。
その後会談は終了し、それぞれの馬車で返って行った。
ショコラと影一人はこのままこの屋敷に残り、バルバス卿には一人の影とクッキーが付いて行った。
お父様と騎士達はケランド王弟殿下の元に向かい彼の保護とイヌエット王弟妃は拘束。王弟妃は王宮騎士達によりそのまま軟禁された。
ギルマスは冒険者達と王都の元王宮薬師の保護に向かい、私に保護した薬師を渡すと今度は暗殺者を拘束するためもう一度薬師の家に向かった。
私とクレイはプリンに乗って騎士団の牢屋に向かい捕まっていた薬師をテントに保護しギルドで元王宮薬師にテントに入って貰い最後にお父様の執務室でケランド王弟殿下にテントの中入って貰った。
その後クレイはプリンと王宮薬師バルバス卿の息子宅に向かい彼を拘束した。
ショコラと影がバルロ公爵を拘束し、ショコラの背中に乗せて王宮に戻った。
影がバルバス卿を拘束し、クッキーに乗って王宮に帰って来た。
ケランド王弟殿下の私室にバルロ公爵邸から戻ったショコラと影が潜んで暗殺者を待っていた。
騎士団の牢屋では、バルバス卿の息子宅から戻ったクレイが王都の薬師に成り替わり潜んでいた。
ケランド王弟殿下の私室には召使の女性が、寝やのお水をと、毒入りの水差しを持って入って来たが、ショコラに毒を見破られ拘束された。
騎士団の牢屋も似たような感じだったが、妹と名乗る女性から食べ物の差仕入れが有り、食べたふりをし、苦しんでる様に見えたクレイに近づいた所で拘束した。
王都の薬師は病人が居ると呼び出された。ギルマスが外に出た所で、隠れていたギルド職員で使いの者を取り囲み拘束した。との事だった。
その後王都の上空から事の経緯を見ていたプリンが二人の気絶した男を咥えてお父様の執務室に連れて来た。ショコラは彼等が暗殺者達のボスだろうと呟いた。
拘束した彼等は個別にこれから取り調べられる。
テントの中の彼等には国王さま自ら、事の経緯を説明された。
ケランド王弟殿下は自分の兄である国王陛下夫妻とフェアリズ王女殿下に深い謝罪と今後決して裏切る事の無い忠誠を誓った。
その後薬師の二名も同じように国王陛下夫妻とフェアリズ王女殿下に謝罪と今後決して裏切る事の無い忠誠を誓った。
◇ ~ ◇ ~ ◇
今後については追って沙汰が有ること告げみな元の屋敷や自室に帰って貰った。
明日からの尋問のため今夜は解散となり、私達もお父様の執務室から王都の宿屋に帰って来ていた。
みんなお腹が空いたと言うので食事をすることにした。クレイと慌てて準備に掛かり少し遅い夕食を終わらせると、珍しくショコラから、翌日の予定を聞かれた。
「リズ明日はどうするんだ?」
「ショコラは何かしたいことが有るの?」
「イヤ、リズが初めて食わせてくれた肉に中々出会わなくてな、あの上手い肉が又食いたいんだが?」
「あ!ショコラの気持ち分る。どんなうまいお肉を食べても、あのお肉の味には出会わないな。又食べたいなぁ。」
と、クレイ迄言い出した。そこにプリンが、
「なに、今よりうまい肉が有ったのか? 」
「ああ、比べ物にならない位美味かった。なあクレイ。」
「本当に美味しかったですね。ボマルツドラゴンも期待していたんですが、あの肉の味には負けますね。」
「儂もあの肉よりうまいとかもと思っていたが、ちと違ったな。」
「アレよりうまい肉なのか。一度食って見たいんじゃが。リズその肉は何処で手に入れたんじゃ。」
「初めてリュウガ達と出会った「死の森」のダンジョンの下層で、魔物からドロップしたお肉なの。ダンジョン調査のために準備した食料を食べ尽くした頃ドロップされたから、殆んどダンジョン内で食べ尽くしてて、あの時のお肉が一塊残っていただけだったの。」
「ではそのダンジョンに行けば又ドロップされるんじゃな。」
「多分ね。私達はボスを倒すまで、一週間位掛かったけど、みんなとなら三日位余裕が有ればいいと思うから、三日後迄に王都にテントを出したり、両方の開拓村にお肉の供給をしたり、今日捕らえた人達を鑑定したり、王都のお肉の分の狩りをしたりして目一杯頑張って、ダンジョンに潜りましょうか。」
「「「「「賛成」」」」
「では明日から又頑張ろう。」
『『『『おー』』』』
翌朝早く食事を終え、両ギルドを訪れギルマスに、昨夜みんなで話した、ダンジョンに三日後から三日間位潜る事を告げ、ギルマス達の了解を得た。
その後、その間に必要な準備を終わらせてしまいたい事を告げ、食料品や魔物のお肉を受け取り、次に魔物を大量に取りだし、その中の三十体を私的分として解体と素材買い取依頼した。
次にお父様の元を訪れ、ギルマス達に告げた事と同じように、三日後に三日間ダンジョンに潜る事を告げると、
「分った。皆さん気を付けて行ってください。リズの事を宜しくお願い致します。 だが、その前に昨夜捕らえて貰った六人を今から個別に尋問する。皆さんに、独房に入れている彼等の鑑定をお願いしたいのだが、宜しいだろうか?」
と言われ全員了承した。
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