第31話 罠


「それと、ギルマスさん忘れていましたが、あの時彼等からお肉を奪った薬師はどうなりました? 彼等から奪ったお肉をどうするつもりだったのでしょうか?」

「罰則金、金貨五十枚の支払いを命じています。肉は商人に売るつもりだったようです。」


「支払いは有りました。」

「イエ、金貨一枚も有りません。」

「今は何処にいますか?」

「王宮騎士団の牢屋の中に居ます。」

「分りました。」


「それとお願いが有ります。」

「はい、改めて何でしょう?」

「工事が始まりましたら、職人達が利用する食堂と休憩所を作る予定にしています。」

「場所はもう決まっていますか。もし決まっていたら、工事開始の前日までに疲労回復機能を付けておきましょう。それと私のテントの異空間と王都外壁を繋げておきます。」

「ありがとうございます。そうして頂けると助かります。」


「すいません私からもお願いが有ります。お忙しいところ恐れ入りますが、お肉を奪った薬師に会いたいのですが、ご一緒して頂けませんでしょうか?」

「分りました。今から行きましょうか?」


「それと、両方の開拓領地の資金はまだお渡ししなくて大丈夫ですか?」

「ハイ、今のところ、半分程残っています。」

「では、使った分の資金をお渡ししておきます。」と麻袋一杯の魔石や宝石それと金貨一万枚ずつを二組テントから取り出し、両ギルドの分としてギルマスに預けた。

「確かに預かりました。商業ギルドのギルマスに渡して置きます。」

「宜しくお願い致します。」


          ◇ ~ ◇ ~ ◇ 


「では向かいましょう。」

 その後みんなで王宮騎士団の牢屋に向かった。

 王宮騎士団の詰所に着くと必要な手続きはギルマスがしてくれた。

 騎士に薬師が投獄されている牢屋に案内された。

 ギルマスが彼に話しかけそれに答えている様子を見ながら何故か違和感があった。

みんなに念話で話しかけた。


「何だろう違和感があるんだけど私じゃぁ分からない。みんなどう思う。」

「奴は利用されただけだろう。人が良いだけのただの小物だ。只薬師の腕は有りそうだ。」

「そうだな。」

「そうだね。知らないうちに罠に掛かった可能性がありそうだね。」

「だれに利用されたんだろう。」

「知らん」

「そんなぁ」

「じゃぁ、かれを追い落として誰が得をしたのだろう?」

とクレイが疑問を言った。

「ギルマスさん、少し聞いていいですか、今王都で病気をしたら誰が診察してくれるんですか?」

「そうだな、今急に忙しくなったのは、彼の弟子だった薬師だろうな。」

「弟子ですか?」


「彼は、この王都では評判の薬師だ、それに王都の薬師を取り纏める地位にある。何故こんな馬鹿な事をしたのか?」

「何か、この薬師の弟子が怪しくない?」

「「そうだな。」」

「そうだね、調べて見たほうがいいようだね。」

 

「彼は、最初は貧民街の者達も分け隔てなく診ていたのだ、人づてに評判を呼んで、忙しく手が回らなくなってしまったからと、弟子を雇ったのが十年前。それが今、後を継いでいる薬師だ。」

「弟子を雇が十年前なんですね。何か繋がりを感じますね。」

「その弟子を雇った頃から、忙しいだけで、貧民街の住人を診ても金にならない。と言い出し診なくなった。彼は欲得で動く人間に変わった。と皆が思ってしまっている。」


「では今、後を継いだ弟子の薬師さんはお肉の罰金は払ってくれないのですか?師匠なのに?」

「ああ、金は無い、の一点張りで。」

「評判の師匠なのに?」

「ああ」

「おかしいですね。王都で評判の薬師ですよ。欲得で診療していた薬師ですよ。そんなにお金に困っているとは思えませんが?」

「そう言えば、おかしい所が多いなぁ?」


「でしょう。彼の評判を落とし、後釜に座る事が十年前から計画されていたとしたら、ギルマスさんどう思いますか?」

「やはり、一度調べて見る必要があるな。」

「ではこちらでも調べて見てもいいですか?」

「ああ構わない。了解した。」


「お父様には少し判決を待って貰います。みんなの意見では、彼は優秀な薬師の様です。この王都以外でも必要な存在になりそうなので勿体ない、下手な判決は、むざむざ悪党の思い道理になるようで、しゃくに触ります。」

「同意見です。では国王様の方はリズにお願いしてもいいですか?」

「ハイ、今から向かいますね。」


 何時もの様にお父様の執務室のバルコニーから中の様子を伺いながら扉をノックすると、そこに丁度お父様がお部屋に入ってきた所で、お父様が私に気づき、扉を開けてくれた。

「ちょうどリズと話したいと思って居たところだった。」

「お父様、何かあったのですか?」

「ああ、王都の薬師が今騎士団の牢屋に入れられて居るのだが、判決を言い渡す前にリズ達に彼を見て貰いたいと思っていたんだ。」


「お父様は、あの薬師をご存知なのですか?」

「ああ、知っていると言うか、面識は無いんだ。マリの知り合いで、余が王宮薬師から薬に混ぜ飲まされていた毒を見つけ、解毒剤を作ってくれたのが、あの薬師だったのだ。」

「それならば、あの薬師はお父様の命の恩人だったのですね。私は先程、冒険者ギルドのギルマスやみんなと一緒に彼に会ってきました。私含めみんな彼が罠に嵌められたと思っています。」

「やはりそうであったか。」


「只証拠が有りません、今から証拠を集めなくてはなりません。お父様もう暫く判決は待って貰ってもいいでしょうか?」

「分った、宜しく頼んだ。」

「ありがとうございます。では事情が分かり次第ご報告に参ります。」


「所でショコラ、一時的でいいので、お父様と執事のセイルに冒険者と商業両ギルドのギルマスと従魔契約って出来ないよね?」

「一時的とは何時までだ?」

「この問題が解決するまで。」

「我は構わんが、父親達はそれでいいのか?」

「聞いて見る。お父様今ショコラと話していた事ですが、どう思いますか?」

「ショコラ殿が良ければ我らは助かるが、お願い出来るだろうか? それと今回クレイ殿に我の陰二名を付けよう。彼等を手足の様に使ってくれて構わない、彼等にもお願い出来ないだろうか?」

「アイ、分った。ではそこのセイルと影もこちらに寄ってくれ。」

 お父様とセイルと影二人のおでこにショコラがおでこを付け獣間契約が完了した。

不思議な気分だとお二人と影は感激していた。がその間に私達はお父様の執務室を後にした。


 その後冒険者、商業両ギルドのギルマスを訪ね、この件が片付くまでの期間ショコラがお父様やセイルと王宮で従魔契約した話をした所、逆にギルマス達から自分達も契約して貰えないかと言われたので、予定通り両ギルマス達と従魔契約して貰った。


 その後王都に向かい、薬師弟子の様子や行動観察をショコラとプリンにお願いし、身辺の調査をクレイと私で聞いて回った。

 すると、彼は貴族の息子ようだと言う少年が現れた。

 何故そう思うのか聞いたら、毎月決まった日に、同じ馬車で身なりの良い男が訪ねて来るとの事だった。


「多分今日訪ねて来ると思うよ。」

「何時頃来るか分かる?」

「後一時間位かなあ」

「分った。ありがとう。」

「どういたしまして。お姉ちゃんには良くして貰ったから。何かあったら又聞いてね。」

 と彼は向こうの路地に走って行った。


 その後、ギルドのギルマスに念話で事情を説明し、ギルマスと一緒に、薬師の弟子の元を訪ねて来る貴族を待っていた。

 すると少年の言う通り立派な馬車に乗った身なりの良い紳士が、薬師の弟子を訪ねて来た。

 彼は薬師の弟子と暫く話した後、周りを確認し、又馬車に乗り元来た道を帰って行った。

 ショコラが隠密で馬車を追って行った。


「ギルマスさん彼の事をご存知ですか?」

「知っているよ。彼は王宮の薬師で、前薬師長がケランド様絡みで王宮薬師長から王都薬師に降格されたため、今回の人事で王宮薬師長になった、バルバス・ストレーク侯爵で、爵位も子爵から上がったはずだ。」

「そうなのですね。そうなると、この王都の薬師を親子で牛耳った。と、そんな所でしょうか? その辺に今回の事件の鍵が有りそうですね。」

「そうだな。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る