第21話 王都の変革
その後みんなで王宮に向かった。
父の執務室のバルコニーの扉をノックすると、扉が開き執事セイルが出迎えてくれた。
父と向かい合って立つと
「待っていたリズ、明日からの準備は大丈夫か?」
「はい、ギルマスの話では、だいたいの準備が終わり、後は細々な準備が出来れば大丈夫。との事でした。肉に少々の不安があるとの事でしたので、五十体を渡してきました。あとは明日様子を見ながら出していきます。」
「そうか、明日は頼んだぞ。」
◇ ~ ◇ ~ ◇
「それとこの金貨百枚はケランド様が冒険者ラスパル達に渡していた報酬を回収して参りました。」
「この金貨は確かに受け取った。代替えとして余が支払いをしよう。」
「いえ、お父様もう代替え金の支払いは完了させています。」
「それはならん。これはお前を殺すための報酬だぞ。」
「ですが、これから彼等には私達の傍でこの国のために、この金額以上の働きをして頂きます。だから大丈夫です。それに私達は、先程ギルドを通して彼等と正式な契約を交わしました。あの時、お父様達に紹介したリュウガの四人も一緒に契約してくれました。これが彼等と交わした契約書です。」
「リズの所も大所帯になったな。」
「はい、みんなで仲良く頑張ります。」
のんきに欠伸をしていたショコラが突然、
「リズそろそろクワッドネックサーペントが育ったのではないか?」
「そうなの、まだ早いと思うけど見てみるね。」
クワッドネックサーペント二匹をテントから出して見た。卵から孵ってそんなに立って居ないのに、もう一メートル位に育っていた。お父様とセイルがびっくりして卒倒しそうになっていた。
「リズ、クワッドネックサーペントまで仲間にしていたのかい?クワッドネックサーペント一匹で王都を崩壊させられると言われているが、それも二匹。」
「ショコラとプリンがいるので大丈夫です。お父様。」
「そ、そうだな。」
「ところでショコラ、この子達と契約できそう?」
「ちょっと待て、聞いて見よう、大丈夫だそうだ。では二人共クワッドネックサーペントの前に並んで座れ。」
「こんな感じでいい?」
クレイと私で二人並んでクワッドネックサーペントの前に座り少し頭を下げた、すると二匹のクワッドネックサーペントが鼻先を少し下げ、私達の額に顔を付けて来た。するといつものように私達の身体が光り契約印が現れ、やがて消えた。
その後名前を付けるため、クレイと話し合い、マシュマロとポッキーにした。
とても気に入ってくれたようだ。
お父様はセイルに支えられながらこの光景を見ていた。が、やがて正気を取り戻した。
◇ ~ ◇ ~ ◇
「それから、これは別な話だが、今日リズに購入して貰った別邸付近を領土とする、ラチェット・シェトラ侯爵とククル・シェランド侯爵を貴族籍から剥奪し庶民にしようと思っているがどうだろうか?」
「お父様それはしてはいけません。本人にはリタイアして頂かなくてはならないでしょうが、ご子息等に後継者は居ませんか? 後々禍根を残さないようにするためには、お父様の寛容な心を見せ、二度と裏切らないと思わせる事が、大事かと思います。」
「居るにはいるが、まだ政務に携わってないのでな。」
「じゃあ、クレイとショコラやプリンに見て貰ってはどうでしょう。」
「そうして貰えると助かる。」
「クレイにショコラ、プリンお願いしていい?」
「「大丈夫」」
「分かった。大丈夫だよ。」
「お父様、では明後日そのご子息たちや後見人が付くならばその方達と会えるように手配して頂いて宜しいでしょうか?」
「早速手配しておこう。セイル手配を頼む。」
「はい承知いたしました。」
「所でお父様聞いていいですか?」
「何だ、なんでも聞いてくれ。」
「ドララド村はどなたの領地ですか?」
「レアレス・デナス侯爵の領地、そなたの母の実家じゃ。」
「そうだったんですね。申し訳ございません。知りませんでした。」
「そうか、教えてなかったな、すまなかった。」
「大丈夫です。 ですが今日見た限りでは、シェランド領とシェトラ領には村が無かったように見えましたが、 どうしたのでしょう?」
「村はあったが、住民が増税で逃げ出し村自体が立ち行かなくなった。と聞いた。」
「ならばギルドはどうしたのでしょうか?」
「ギルドは元々無かったと記憶している。」
「そうなのですね。では新領主の意向も有ると思いますが、あの二つの村に冒険者と商業両ギルドを備えた村の完備を提案します。」
「リズ簡単に言うが、その村を作るのにどれだけの費用、人手、時間が掛かると思うのだ? 残念ながら国が安定していない今、国庫から簡単に村建設の資金は出す事が出来んのだ。」
「大丈夫です。村を作る費用は、両村の建物を買取り金額を支払った残りを当面の費用に充てます。領民が増え村の運営が軌道に乗ったところで領主に権利を譲渡致しますが、領主様からの王都への上納金とは別で、村から上がって来る税の二十分の一を開村費用の返還終了まで、村のギルドから王都のギルドを通して王宮に収める事を条件とします。と言う事でどうでしょうか?出来れば村の名前はショコラとプリンにしたいのですが?」
「では、それを新領主の条件としよう。だが、その開村費用はリズが出すのだから、リズに返済するのが道理と思うが、何故王宮に?」
「いずれ、私が此の王宮に戻った時、お父様が作りたいと目指した国を見てみたいと
思うからです。」
「分ったではリズ約束しょう、国民が笑って暮らせる国づくりをすると。 国の税を二年前の税額に引き下げる触れ書きを明日王宮から発布する。」
「お父様これで国民の皆さんが安心して暮らせるようになりますね。」
「貧民街を立て直し皆が暮らしやすくする。又、安価で利用できる、宿泊施設や浴場、食堂や麦や野菜を育てる基本の運営は自分達で行い、ギルドを通して販売し収入を得る力を養う。勿論少ないが報酬も国から発生する。」
「貧民街の方達は、働きたくても働けない形になっていた事から変えて行くのですね。 それが実現したら、国にとって大きな力となるでしょうね。」
「食育工房や革製品の工房に大工職人工房、鍛冶屋に縫製工房や、冒険者の訓練場や他必要な工房や施設を準備し、専門家を国が派遣し運営する。これもギルドを通し収入を得る力を養う。勿論少ないが報酬も国から発生する。」
「将来自分達がやりたい仕事を、安心して学べる事は大きな力となるでしょう。」
「それと働くための壁が、識字率の低さだ。この識字や計算力を高めるための教育施設と教師の派遣この全ての運営を国が負担する。庶民なら誰でも無料で学べる、安心して学べるよう二年間の期限付きで、少ないが報酬も国から発生する。これらの施設で収入を得る力が付いたら、そこから自立させる。それと国の運営で庶民なら誰でも無料で利用できる病院を建てようと思うがどうだろう。
「お父様素晴らしい考えだと思います。当初は思いがけない程沢山のお金が要ると思います。ですが、長い目で見れば国民が増え、安心して暮らせる国になり、国民の生活に余裕が生まれる。そうなれば経済が回る。これが他の村々まで広がれば国力が安定しますね。無鉄砲者が居ないか、時々クレイ、ショコラ達に見回りして貰いますね。」
「「「了解」」」
「頼んだ。頼もしい限りだ。」
「ではお父様この辺で失礼致します。」
「所でリズ、王都では何処で休んで居るんだ?」
「宿屋に行こうかと?」
「では部屋を用意させよう。」
「いえ、お父様さま、私はもう少しこのままが良いと思います、どうかご案じなさいませぬように。それにショコラ達の食事の準備もありますので。」
「そうか、分かった。」
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