第22話 肉の配布


「では明日から肉の配布が始まるのだな。忙しくなるだろう。」」

「はい。開始前に皆さんに休んで頂く予定にしています。」

「そうかでは、明後日には、次期領主達を集めておこう。」

「宜しくお願い致します。ではお父様心健やかにお過ごしください。」

「リズもな。クレイ殿、ショコラ殿、プリン殿、マシュマロ殿にポッキー殿王都の事宜しくお願いします。」

「はい、お任せください。」

「「アイ分った。任せてくれ。」」

「ではお父様お休みなさい。セイル、お父様の事宜しくお願いします。おやすみなさい。」

「おやすみなさいませ。」

 と入口に控えていた父の執事セイルに声を掛けバルコニーから執務室を後にした。


 翌朝暗いうち朝食を済ませ、冒険者ギルドのギルマスの部屋に来ていた。

 みんなで挨拶を済ませた後、ギルマスと冒険者達にクワッドネックサーペント達を紹介した後テントで休んでもらった。

 お疲れ気味の皆さんにも交代で休んでもらっていた。

 その間、私達はギルマスと、お肉配布の段取りと打ち合わせを済ませていた。その後冒険者達は部屋を出て行き持ち場についていた。

 夜が白々と明け始めた頃には冒険者ギルドの前には行列が出来始めていた。

 早速警備に、クレイ、ショコラ、プリンの傍にマシュマロとポッキーが付いてギルマスの部屋から出て行った。


 私はその間ギルマスと防音部屋でシェトラ領とシェランド領に冒険者と商業の両ギルドの作成が可能か聞いていた。

 どういう事か詳しく聞きたいとギルマスに聞かれたので、昨日王宮でお父様に話した事をそのまま伝えた。ギルマスからの返事は、

「基本的には可能です。今迄その領の村にギルドが無かったのは、領主様が資金を出し渋った上、領地税が高く、領民救済のための資金まで領民に渡さなかった事が、村崩壊に繋がった。」と教えてくれた。


「そんな村に人が集まるでしょうか?」

「大丈夫だと思います。リズ様達とギルドが目を光らせて措けば、領主様でも今までの様に領民を苦しめることは出来ません。ある意味ギルドを敬遠したのも此のためだと思われます。逆に安心して暮らせると領民が集まるかもしれません。」

「そうなると良いのですが。 お父様にお願いして、明日二つの領地の次期領主と後見人も含め、クレイ、ショコラ、プリンやマシュマロにポッキー達と面会する予定になっています。」


「そうなると、商業ギルドのギルマスとも話し合いをしておきましょう。」等々話合っているうち、みんな休憩も終わり持ち場に戻っていた。

 テントを直した所に、クレイがお肉配布の開始を告げに来た。

 騎士の方々がお肉は十分あるから慌てなくて大丈夫です。と告げて回ってくれているので、大きな混乱もなく順調にすすんでいる。

 私も、クレイの傍で様子を見守る事にした。

 お肉配布が順調に進み、お昼を回ったところで、ふと違和感を覚えたが、気のせいかと思いみんなに念話で聞いてみる事にした。

「みんな、妙な動きに気づいた事は無い。」

「「「ある。」」」


 やはり

「あの五人の少年の動きがおかしい事は分ったけど、何故かが分からないの。」

 するとクレイが

「あの先に大人が隠れていて、あの子供達は脅されているように見える。」

「事情を聞くには大人達に気づかれない様に離さなくてならない。」どうしょう。

「ならば我とマシュマロが大人の奴等の前に立ち塞がり目を眩ませよう、その間にテントに隠し話を聞いたらどうだ?」

「了解。じゃあ、ショコラとマシュマロお願い。」


「マシュマロいくぞ。」

 ショコラとマシュマロが前を通り一瞬彼等の視界から子供達が見えなくなった瞬間に彼等をテントの中に隠した。

 子供達はビックリしていたが、少し待つと落ち着てくれたので、事情を聴く事にした。


 彼等は貧民街で育っていた。母親と二人、父親と二人、家族五人など様々だが、全員親が病気で働けない。こんな家族の元に、今迄何度も薬や治療を頼んでも、門前払いだった薬師の若い先生が昨日突然、貧民街の親が病気の所に現れ、治療を行いクスリを置いて行った。

 その後子供達が呼び出され、明日ギルドで配られる肉を受け取ったら、親の治療代の代わりに薬師の先生にお肉を渡すように言われた。

 隠したり出来ない様に見張りを付けておく。受け取ったら薬師の先生に渡すように言われている。又、次の肉を持ってくれば、薬を渡すと言われた。と教えてくれた。


 この時みんなを抱きしめ彼等を癒した。

 私はみんなに聞こえるように話した。

「ショコラ聞こえた。」

「ああ聞こえたぞ。」

「彼等を捕まえられそう。」

「ああ目の前で怯えて居るわ。」

 じゃあ騎士達もいる。

「目の前に居る。」

「なら捕まえて。」

「分った。」


「それじゃあみんなお肉を貰ってお家に、お姉ちゃんとお兄ちゃんと帰ろうか?今見たことは秘密だよ。」

「うん絶対喋らない。」

「それとお肉をもう渡した子は居たか分かる?」

「うん五人が渡していた。」外に出てテントを直した。


「分った、じゃあ行こうか。でも、このお兄ちゃんとここで少し待っていてね。お父さんたちとお肉を渡してしまった子の分のお肉を持って来るから。」

 私は冒険者ギルドに戻り、ギルマスに今の事を伝えた後、貧民街にお肉を持っていくため、魔物解体場に来てお肉を受け取っていた。


「お兄ちゃん、お母さん達のお肉も貰えるの?」

「ああ、みんな一人一個ずつ貰えるんだよ。」

「王都の掲示板にこれが張ってある間は貰えるから、足りなくなったら貰いに来たらいいよ。でもね、人にあげてはいけないよ。受け取った人が罰せられるからね。」

「分った。」

「お待たせ。みんな行こうか。」

 念話でショコラとプリンには警備をお願いした。


 ギルドの外に出て暫く歩くと、町の様子が変わってきた、少し路地を入ると、貧民街に繋がっていた。

「お姉ちゃん此処がボクの家だよと、扉を開けるとベッドに臥せっていた女性がいた。」

「お母さんの手を触ってもいい?」

「いいよ」

 彼の母親の手を握りながら病を癒すと顔色も良くなり起き上がれるようになった。

 他に家族が居ないか聞いたが母親と二人暮らしらしく、お肉を二個渡し次の家を訪ねた。

 彼等に聞きながら貧民街の病人をクレイと一緒に癒して回った所、もう病人は居ないとの事だった。

 次に今回のお肉の配布が有る事を知っているか聞いてみた、みんな知らなかった。

 昨日掲示板に通達書が貼られたのは見ていたが、何が書いてあるか分からなかった。と言われ通達ミスを深く反省した。


 今度は今集まって貰ったみんなに貧民街に振れて回ってもらえるようにお願いした。

 この時、昨日の薬師のような大人が現れたら従う振りをして冒険者ギルドに報告するようお願いした。

「なにをされるか分からないから、絶対逆らったり反抗したりしてはダメ。」と言い聞かせ、先程癒した五人以外を癒し、その後みんなと別れ冒険者ギルドに帰って来ていた。

 一端預かった肉の残りを解体場に戻し、ギルマスに貧民街での報告を終えた。


          ◇ ~ ◇ ~ ◇ 


 その後、騎士が冒険者ギルドを訪れ、先程の薬師を王宮に連れて行った。と報告して来た。

 使いの騎士に、ギルマスは商業ギルドのギルマスと王宮を後ほど尋ねる。と返事していた。


 貧民街で出会った少年達から話を聞いた人達が押し寄せたが、お肉に余裕がある事を聞いていたのか、混乱もなく夕方にはその騒ぎも収まっていた。

 ギルマスに、ドララド村とラード村の様子を聞いたが、領主様が私兵を出してくれたので、混乱もなく配布は終了した。との事で安心した。


「今日は大変お世話になりました。」

「いえいえ、王都の国民のため本当にありがとうございました。」

「まだ暫くは配布をお願いしないといけないのですが?」

「大丈夫です。今日ほどの事にはならないでしょう。此のギルドだけでも十分対応できます。」

「ありがとうございます。では、明日王宮を尋ねたら、狩りに行きたいと思っていますが、宜しいでしょうか?」

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