第3話

「佐奈…? どうしたんだ?」



黙りこくる私を気遣うように首を傾げる彼に、私は揺れる視線を向けた。



「え、えっと…」



声を出すと、喉がきゅっと痛んだ。長い時間喉を使っていないせいだろう。


少し咳き込んでしまうが、そんな私を彼は優しく見つめている。



どう、伝えたら良いのだろう…



「あの…さっきの……サナって、私のことですか?」


「え?」


「あなたは…誰ですか? 思い出せないんです、何も」



縋るように見つめると、彼は目を丸くした。





「思い、出せない…?」



彼の後ろにいた女の人が信じられないとばかりに呟く。



「覚えて、ないの…? 私のことも?」


「は、はい…。すみません」


「そんな…」



唖然とする彼女に、また、罪悪感が私の心を支配した。



「美希ちゃん、先生を呼んで来てくれ。記憶喪失かもしれない」



そういった彼に頷き、彼女は部屋から出ていった。

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