詩の部屋 10


  ○ 28


ドレッシングがないので

普段家で作っているのをここでも作る

上等そうなオリーブオイル

見たこともない文字が書かれていて

どこ産かわからない

レシピは途中までしか窓に浮かび上がらない

後は思い出しながら味を調える


  ○ 29


キッチンにあるフォークでサラダを食べる

フォークのしっかりとした重みと光沢

私には分からないが銀器かもしれない

外では鳥の大きな鳴き声

さっきまでやって来ていた鳥だろうか

ドレッシングのかかったレタスをしゃくしゃく食べながら

鳥の鳴き声がまだ消えない


  ○ 30


カットしたトマトを齧るたびに

詩が少しずつ思いつく

詩を書くべきかサラダを食べるべきか

ハムレットほどの葛藤には苛まれず

もう一つトマトを齧る

詩の部屋にあるノートに記そうと思うが

浮かんできた文字はもう擦れていっている

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