詩の部屋 9


  ○ 25


詩の部屋の床を撫ぜてみる

古い床板の木目から

何か細かいものが湧き上がってくる

それは小さな文字のような声のような

弱々しいような力強いような

詩の部屋の愚痴なのかもっと深遠なものなのか

何もわからないままもう一度床を撫ぜる


  ○ 26


詩の部屋の隣にあるキッチンには

見たこともない道具が並んでいる

何かを切るためなのか混ぜるためなのか

みじん切りにするためなのか多面体にするためなのか

金属やガラスでできた道具の表面は美しく磨かれ

それぞれ思い思いに光を反射して

無言のおしゃべりをずっと続けている


  ○ 27


台所にあるまな板でキュウリを切る

切るたびに文字が転がり出す

アルファベット キリル文字 漢字

何の脈絡もなく現れて

床に落ちるとピリンピリンと小さな音がする

トマトも切ってレタスをちぎる

サラダを運ぶ足元で小さな音が止まらない

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