詩の部屋 7


  ○ 19


詩の部屋から庭を見る

そこにはたぶん籐の椅子があって

その上には藤棚から垂れ下がった

たくさんの花が咲いているはず

でも聞こえてくるのはどうにも不似合いな

コンパイ・セグンドの歌声

猫はどうでもよさそうにあくびをする


  ○ 20


ぼんやりとソファに座っていると

思い出すのは校庭にあった

大きなすずかけの木

いや本当はそれほど大きくはなく

私が小さいだけだった

ふと机の上を見るとすずかけの実が二つ

あの日あの子に言えなかった言葉は何だったんだろう


  ○ 21


生まれてはじめて買ったレコード

レッド・ツェッペリンの「天国の階段」をかける

紅茶はダージリンでもセイロンでも何でもよく

牛乳だけで砂糖は入れないミルクティー

詩の部屋なのに言葉は減ってばかり

いつか地下から湧いてくるかもしれない

猫だけがずっと独り言を言っている

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