詩の部屋 4


  ○ 10


詩の部屋にあるソファに座ると

急に雨が上がって陽が射してくる

郵便局にはポプラの木が生えていて

道を忘れないように目印にしていた

ここから何光年も離れた昔

私がまだ未来に顔を向けていた

そんな日


  ○ 11


庭には古い椅子だけがあって誰もおらず

名前も知らない鳥たちが何度も鳴いて

小さな羽根がいくつも落ちている

雨の日にPCに向かってこんなふうに書いて

その情景の先を想像する

子供の頃作った小さな椅子が横倒しになって埃を被っていて

自分のことも書くようにと哀願してくる


  ○ 12


庭に横倒しにしていた脚立に

蔓草がびっしりと絡みついて

脚立はすっかり庭の一部と化している

兄が持ってきた小さな木は誰にも

引き取られずにすっかり枯れてしまって

新しい雑草がその植木鉢を奪って小さな花を

邪魔されることなく咲かしている

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る