日常、非日常
あれから……あの日から2日が経った
朝が来た
そう思った途端に体が重く感じる
何故なのか自分でも分からない
あれだけ朝が、一日の始まりが楽しみで嬉しかったはずなのに
「……んっしょっと」
重い体を起き上がらせ、着々と準備を進めた
洗面台で顔を洗う
髪をくしで整える
朝ごはんを食べる
ハンガーにかかってる制服に袖を通す
机の上の課題を鞄にしまう
「…………」
部屋の中に沈黙が広がった
「いつもなら……このくらいに悠人が呼びに来たっけ」
ぽつりと零れたその言葉は今1度拾うこともなく床に落ちた
玄関で靴を履き、ドアノブに手をかける
「行ってきまーす」
「行ってらっしゃい」
いつものお母さんの返事
でも、外の景色は大きく虚しく広がっている
「……ふー、行こう」
いつもの通学路、いつもの風景
しかし、私の隣だけ……ただ虚しく、いつもと違っていた
ただ寂しく、辛い登校時間を過ごすことになった
一人で学校の校門を通るのはいつ以来だろうか
いつもの当たり前と違って空いた隣
「おはよ、藍」
いつもと違う感覚に惚けていたら後ろから声がした
「あ、おはよう、
声の正体は同じクラスの
「どうした?そんな暗い顔して」
「あぁ、ちょっと……ね」
「そうか、俺でよければ相談乗るぞ」
「うん、ありがとう」
この時の私は多分、会話に集中していなかったのだと思う
頭の中は悠人の事でいっぱいだ
未だに現実を受け入れていない自分がいる
何が起こっているのか、夢の中なのか、不安な気持ちで満たされていく
授業が始まってもその気持ちは変わらずだった
頭の中で昨日の出来事が鮮明に蘇り、繰り返す
「――わ、」
「―し川」
『星川!起きろ!!』
頭の中で響く声が、私に向けてだと気付くのに少し時間がかかった
「は、はい……」
いつの間にか眠っていた
そう言えば結局あの病室以来ぐっすり寝れてない
そのせいか、好きなはずの国語の授業で眠ってしまっていた
「大丈夫か星川?お前が居眠りとか珍しいものもあるんだな」
「すみません……」
「まぁいい、それじゃあ代わり、服部答えてみろ」
「んぁ!?俺ぇ!?」
「なんだよ答えれないのか?」
「はぁ……本文104
「おぉ、流石だ。じゃあその次の文章を―――」
授業が進むにつれ、私は妙な疎外感を覚えた
気がつけば学校が終わった
気がつけば清掃をして、帰宅の準備をしていた
用具をまとめ教室を出ようとした時
「星川、ちょっと良いか」
担任の教師から呼び止められた
「は、はい……」
そう返事をしてから校舎端の空き教室へと移動した
扉をしめ、向かい合うように席に座った
「今日1日何があった?先週の元気が嘘のように顔が暗いぞ」
「い、いえ、特になんでも……」
私は作るような笑顔を浮かべ答えた
「……言いたくなければそれでいいんだが、もしかして陽川の事か?」
「っ!?」
その言葉に釘を刺されたように直後、身体が硬直した
「え、あ、ゆ、ゆう……陽川の事?なんの事ですか??」
分かりやすい同様と共に信憑性の無い否定を並べた
「……そうか、何も知らなかったか。すまんな時間取らせて」
担任は少し沈黙を置いてからそう言い放った
「はぇ、は、はい……」
この時は気づかなかったが、担任に問われた時に涙が頬を伝っていた
担任はそれを察してあえて何も聞かなかったのだろう
「藍!まって!」
帰宅路を歩いて帰る時、ふと後ろから声がした
振り返るとそこには走ってきたのか息を切らした魁斗がそこにいた
「はぁ、はぁ、やっと追いついたー」
息を整えながら安心したような声で言った
「どうしたの?ってか部活は?」
「あー、なんか顧問が会議で急遽オフになったんだ」
「そうなんだ」
我ながら淡白な返答をしたと思ってしまったが訂正する気にもなれなかった
「なぁ、今日のお前なんか暗くね?」
「え?そうかな……」
「おう、授業中もぼーっとしてるか寝てる時のが多かったろ」
「あはは、ちょっと夜更かししちゃったからかな?」
惚けるように答えた
「なぁ、本当に何があったんだよ」
が、どうやら通用しなかったらしい
「本当になんもないって」
私は笑い混じりに返答した
笑っていられたかすらも怪しかったが
「そうか……なぁ、藍」
「ん?どしたの?」
「俺じゃなくても良いからさ、言いたいこと、やりたい事があるならその気持ちに従えよ」
「え?あ、うん、ありがと……?」
「それじゃ!また明日な!」
そう言って走り去ってしまった
「……やりたい事……」
その言葉が妙に喉に引っかかった
だが、その引っかかりが取れた頃には足が病院へと動いていた
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