決意

「……あ、あれ」

「あ、起きましたよ、柳先生」

目が覚めると目の前に美形の女性が居た

「……うわぁ!?」

思わず飛び起きてしまった

「どうしてそんなに驚くんですか?」

聞いた事のある声だと思ったら槻島さんだ

昨日は気が動転してたのかよく覚えていない

ただ、これだけは覚えている

『悠人の記憶が、当たり前が戻るかもしれない』

私がそう色々と考えていると

「あのー?」

「あっ!す、すみません!ちょちょ、ちょっとだけ考え事を……!」

「そうでしたか……大丈夫ですか?」

「え、ええ!お陰様でとても!!」

そこで私は改めて槻島さんの容姿をちゃんと見た

自分より身長が高く、顔も凛としていて美形と言うに相応しい、白い看護服は彼女のスタイルの良さを強調するだけで無く、美しささえも感じる

極めつけは頭を動かす毎に揺れ動く黒い長髪

総合的に見て、とても美人である


私が初めて槻島さんに見惚れていると、その後ろから柳先生が顔を出した

「あ、おはよー。朝までぐっすり寝てたねー」

そう言われて部屋の窓を見てみると、日差しが差していた

「あ……本当だ……って!どうしよう、私お母さんに連絡してない……」

「お母さんの事なら心配ないさ、ちゃんと僕が伝えておいたから……と言うより、お母さんの方から連絡来たんだけど……」

「え?」

「あぁ、いや……」

私が柳先生に聞き返すと、少ししどろもどろした柳先生に代わり槻島さんが説明し始めた

「柳先生、藍さんのお母さんから自分の娘をたぶらかした変態だってずっと言われててて、何とか説得は出来たみたいですけど」

「いやぁ……最初の罵詈雑言は効いたなぁ……」

「あ、母が申し訳ございません!!」

「いや、お母さんの反応が正しいよ……」

少し落ち込んだ声色で椅子に座る柳先生

「さて、気持ちは落ち着いたかな?」

即座に切り替えて私に尋ねた

「……まだ、信じられてない事ばかりです……でも、お陰で受け入れる覚悟は……出来ました」

「そっかー……」

柳先生はそうつぶやくと、私の頭を軽く撫で言った

「最後の質問だ、もちろん僕らの方でも最善を尽くすつもり。でも、これは君にしか出来ない前例の無い話……それでもやるかい?」

「はい……私の手で悠人の記憶を、悠人を取り戻せるなら何だってやります!」

そう気を張って言った後、柳先生と槻島さんが自宅まで送ってくれた




「それじゃあ、陽川くんに何かあったらすぐ連絡するねー」

そう言って柳先生の白い愛車を降り、家の玄関を開けた

なんだか久々に帰ってきた気がする

それくらい長く、受け入れられないと言う事なのだろうか

「……ただいま」

玄関の扉を閉め、小さく呟いた

日曜日の朝、本来なら自室でゴロゴロと堕落した時間を過ごしていたはずの

お昼になってお母さんに呼ばれる事を想像するはずの当たり前

お父さんの死と、悠人の事故

2つの事から分かったこと


日常当たり前はその日、突然瓦解がかいする』


でも今回はお父さんの時とは違う

私が、私だけが悠人を助けれる

そう思える事が、今唯一の心の安置だ


「あら、おかえり、藍」

「あ……お母さん」

「手を洗ったら朝ごはんにしよっか。まだ何も食べてないでしょ?藍の好きな甘い卵焼き作ったから」

「……うん、」


何も聞かなかったお母さんに疑問を浮かべながらも感謝した

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