あの日
大好きな朝を迎え一日を過ごす
そんな当たり前が続いていた―――
あの日までは
なんとも無い休日
ただの休み、羽を伸ばすための時間
……のはずだった
「藍!起きて!起きなさい!」
普段、休日には聞かない母の声が私の部屋まで届いた
「んぅぅ、何ー?」
間抜けた声で返事をする
ド、ド、ド、ド
階段を駆け上がる音が聞こえる
二階にある私の部屋に、お母さんが向かってきているのだろうか
重い
「藍!大変よ!」
「だから何があったの?」
目覚めを邪魔された怒りのこもった声で聞く
その知らせで絶望する事など知る由もなく
「いい?落ち着いて聞くのよ?」
肩で息をしながら私に言い聞かせるお母さん
「分かったから、お母さんこそ落ち着いて?」
「……倒れたって」
「え?」
「悠人くんが倒れたって!さっき悠人くんのお母さんから連絡が来たのよ!」
全身から血の気が引いた
三年前の絶望感が顔を覗かせた
いや、ほとんど確信に近いものだったのだろう
「場所は?」
「……え?」
「だから!悠人の場所は!?今の! 」
「すぐそこの病院で検査中だっt―――」
私は寝起きの体を叩き起してクローゼットから適当に服を手に取り着替える
お母さんの声が聞こえる頃には、既に外に出ていた
病院に着いた
自転車ではなく走って来たせいで足が痛い
帰宅部であった弊害がここで生まれた
病院に着くやいなや見覚えのある陰が目に映る
「あの!悠人は!」
その陰の後ろまで移動して問いかける
「……?あら、誰かと思ったら藍ちゃんじゃないの!」
「あ、お久しぶりです……」
悠人のお母さん『
「その……悠人は大丈夫なんですか?」
「私も今来たから状況が分からないのよ……学校から電話を貰って急いで車飛ばして来たから」
「そうですか……」
名前のない不安と失踪感が身体を駆け巡る
あれから何十分経ったか
ただ無事でいてくれと心で何百回何千回と唱えていたからか、時間の感覚が曖昧になっていた
いつの間にか移動して手術室の前にいた
中から水色のエプロンを身につけた医者が出てきた
「お母さんと……娘さんで宜しかったですか?」
「あ、私は……」
「友達です。一番仲の良い」
なんて言おうか迷っていたら智美さんが言ってくれた
「そうですか。手術の結果ですが、一命は取り留めました」
「本当ですか!?良かったぁ」
智美さんが今にも泣きそうな声で安堵した
ふと、医者の顔が視界に入る
若干顔を
「……何が……悠人の身にあったんですか」
「……申し訳ございません」
心の中で聞こうと思っていた事が口に出ていたようでそれを聞いた医者が頭を下げた
「手術は成功したのですが……後遺症が残ってしまいまして」
「後遺症……?何があったんですか!」
安堵したかと思えば再び崩れそうな声を上げる智美さん
私も生唾を飲む
医者の口が開かれるまで随分な時間がかかった様な気がする
「――――――――」
……は?
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