当たり前

あいー、早く起きなさーい!」

お母さんの声……あぁ、もう朝か


私は朝が好きだ

朝は、当たり前のように来るから

当たり前……お母さんが私を大きな声で起こすのも、着替えを済ませてリビングに降り食事をするのも、何気ない会話を家族と交わす事も


疑う余地なく私、『星川ほしかわ あい』の何気なく楽しくて当たり前な一日が始まる


そう……全て当たり前



でも、私は知っている

その当たり前は……ある日音もなく壊れていく事を





―――三年前―――

私たち家族はお父さんをうしなった

癌だった、医者からはかなり前から余命宣告されていたし、分かっていたことだった


でも……覚悟を決めていたつもりでも……いざ目の前で大好きな父が死ぬのは今でもあの底知れないが私の心臓を強く握る




―――現在

「ピンポーン」

高校の通学鞄を肩にかけ家を出ようとした時、我が家のインターホンが声を出した

「はーい、今出まーす」

玄関のドアを開けると一人の少年が見えた

「おはよ!一緒に行こーぜ!」

「おはよう悠人ゆうと、行こっか!」

彼は陽川ひかわ 悠人ゆうと

同じクラスで私の幼馴染

彼と会うのも当たり前の一つだ


悠人と学校に行き、授業を受け休み時間に友達と喋る

それが私の当たり前だった



あの日までは

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