第15話:ダッシュアンドキャッチ!
目指すは100メートル先の壁。西の大森林に入ったときの柵とはまったく違う。完全な灰色。ここを突破しない限り進むことはできない。私たちの本当の目的はここやこの先ではなく、もっと広く、大きいものであるのだから。
「正直こんなことやるぐらいなら作戦を練って行ったほうが良い気がするけどね。」
「でもここにずっといるほうが危険じゃない?ボラ、」
トンカが指し示す方向をみると数人の兵士が重厚な装備を着て施設内を歩いている。
「西の大森林に入るときはこんなにいなかったよね?なんなら僕たち見てないよね?」
「見てないな。」
「自分のときもそうっすね。入ることは簡単すけど絶対逃さないみたいな感じ?」
「多分そうだろうな。これが大森林に入る者はいるが帰って来る者はいないという理由だろ。」
「でもなんでバレたのかな?」
「メギを無効化した時点でバレたと思うよ。まずあんな事普通じゃ起こらないしね。」
みんなの視線が私に向く。
なんでそんなに驚いた顔してるんだろ。トンカはたまにアホになるから仕方ないけど、ライロックはなんでだよ!
「でも、バレたってことは堂々としていいってことでしょ?だったら強行突破が一番よくない?」
「まあそうなるな。」
「ライロック!?最近の君は思考停止してない!?
」
「まあ隊長が言うことだ、仕方ない。」
「まあ、そうだけど。」
「コンパスは何かいいアイデアある?」
「え、私?」
いや、そんなにいきなり聞かれてもすぐには答えられないし。だから私は作戦を練ろうって言ったんだけどな。
「さらに作戦を」
「ないなら決定で!」
「え!?」
「ライロックもアイレーもいいよね?」
「ああ。」
「いいすけど。」
「多数決で僕の勝ちだね。」
え、本当に行くの?
「待っててもいつか気づかれるだけだからな。それなら自分から行動したほうが悔いは残らないだろう。」
これに関してだけは賛成だ。今まで自分から行動せずに後悔したことはたくさんある。だけど今回は話が違うじゃん、死ぬかもしれないんだよ。なんでそんなに気楽なの?
「多数決だから仕方ないね。計画を立てよう。」
「あそこはどうだ?今も兵士がいない。」
「自分もそこがいいと思うす。他のところもいいかもしれないすけどあそこが一番手が薄いと思う。」
私の意見は反映されないんだろうか。まあ仕方ないか。男なんてこんなもんでしょ、いつまでたっても子供なんだから。
「私はあえてのあっちがいいと思う。あそこはあまりにもいなさすぎて誘導されている気がする。」
「確かに、その考えもあるな。」
「確かにいいかも。兵も少ないしライロックもいるからいけるよ。」
「逆に兵士がいるほうが安心す!」
ライロックもいるしある程度の大人が来ても突破はできると思う。トンカも納得してるみたいだしよかった。アイレーに関してはもう何言ってるかわかんない。
私たちは大森林の縁を草に隠れながらそろそろと移動した。持っているものはバッグだけ。最悪、私の持っている機械も武器になる。
「ここらへんだな。」
目的地についた。私たちの道には兵士が2人のみ。警戒心がないのか持っている武器も腰のベルトにつけている。これなら私たちでも行けそうだ。だけど、問題が1つある。軍施設の壁をどう突破するかだ。今回は私たちが入ってきた施設の壁とは違い完全にコンクリートでできている。足や手を引っ掛けれそうな窪みはない。兵士を突破しても逃げる道はないのだ。
「ねえ、この壁はどうするつもり?」
「それは考えがある。」
そう言うとライロックはバッグから長い、4,5メートルはありそう、な草を取り出し近くにある大きめな石を拾った。
「それはどうするつもり?」
「これを投げて壁に引っ掛けてロープ代わりにする。」
「切れないの?」
「大丈夫だ。コンパスが休憩してる間に俺たちはこれで遊んでいた、耐久性は申し分ない。もうすでに二本はできている。うまく行けば一分以内に壁を突破できる。」
「遊びって、。まあこれしかないからやるけどさ。」
「僕これ得意!何回もやったしライロックよりも速いよ!」
「そうすよ!トンカさんはめっちゃ速いす!自分よりも!」
なぜアイレーがトンカを持ち上げるのか分からないがトンカが幸せそうだから聞かないことにした。
「よし、できた。んじゃいくぞ。」
「え、速くない!?私まだ心の準備が。」
「そこに草を敷いといた。そこがスタートラインだ。俺が最後に登る。このロープを持つのは俺とアイレーとトンカだ。最悪武器にしろ。バッグは背負っていくが邪魔になったらすぐに捨てろ、分かったか。」
「よし、いくよ!」
「よっしゃ!!!」
これだから男は!もう遊びで生きてるでしょ!こんな命がけのことなのによくこのテンションでできるな、楽しそう。私には無理だ。
「位置について、よーい」
ライロックがスタートの合図をする。まず先にアイレーが飛び出し、その半歩後ろをトンカが走っている。アイレーは一直線に兵士に向かい殴り飛ばした。後ろにいるトンカはそれを確認した後に壁に石を掛け脱出のロープが完成した。ライロックはもう1人の兵士に向かい同じく殴り飛ばした。2人の兵士は音もなく消え他の兵士もまだ気付いていない。心臓が高まる。
トンカはすでにロープを登り始め、アイレーとライロックも石を壁にかけた。私はロープを登ったことが一度もなく下にいるライロックから押してもらった。トンカが壁を登りきると同時にアイレーもてっぺんに到着した。私はようやく壁に手をかけ2人に引っ張ってもらった。私が上がると同時にライロックとすぐに登りきった。まだ他の兵士は誰も気づいていない、応援も来る様子がない。心臓は未だ冷めない。
下を見るとさっき登った壁が意外と分厚いことを知った。ライロックたちはロープを回収した。壁の下に降りようとしたトンカは先に降りていたアイレーに受け止められる形で落下した。私は特に高所恐怖症というわけでもなく壁に添いながらだが1人で下に降りた。その後すぐにライロックも降りてき腕には草でできたロープが巻いてあった。
「ね、僕の作戦よかったでしょ?」
トンカが笑顔で訪ねてきた。危険なことの後の安心感とアドレナリンの放出によってそんな笑顔が私たちに満足感を与えた。
「当たり前でしょ、こんなさく」
「逃げろ!!!!!」
私はライロックの声に驚き動けなかった。ライロックの方を観ようとしたそのとき、近くで破裂音が聞こえた。音の方はトンカがいた。見るとトンカは頭から倒れていた。その先にはたくさんの人影が。真っ黒い制服、無感情な顔。
軍隊だった。
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